野球やサッカーなど、ひいきのチームが負けたとき、悔しくて腹立たしい思いをした人は多いだろう。大事な試合で敗北したなら、一日中不機嫌になる熱烈なファンもいるのでは。自分でも嫌になるくらいのイライラ。あるいは絶望感。そんな感情の高ぶりを簡単に収める方法はないものか。〝心を整えるプロ〟とも言える僧侶なら、良い知恵を授けていただけるのでは-。
神戸市須磨区の須磨寺・小池陽人(ようにん)副住職(38)は、全国の僧侶の中から宗派を超えて大賞を決める「H1法話グランプリ」創設きっかけとなった2018年大会のグランプリ受賞者。動画配信も行っており、YouTubeチャンネル登録者数8万人超、インスタフォロワーも1.6万人を超える全国屈指の人気僧侶だ。穏やかな語り口の法話会には毎回、大勢の人が訪れる。
小池副住職はいわゆる〝アンガーマネジメント〟について、「感情の3要素」を知ることで対処法につながると語る。「感情の3要素」とは「感情は思えば思うほど強くなる」「思わなければ長続きしない」「手足を動かしたり行動すると薄まる」の3つ。従って、怒りや悲しみを感じたときは「掃除でも買い物でもよいので、とにかく手や足、体を動かすこと」をすすめる。体を使って行動することで、強い感情は薄れていくという。
その上で、「感情本位ではなく目的本位の生き方が大切」と説く。「朝から嫌な人に会って、嫌な気分で最悪な一日だった、と気持ちの面ばかり考えてしまうのが感情本位。そうではなく、嫌なことはあったけど『ちゃんと仕事に行った』『ご飯もしっかり食べた』など、感情に左右されずにできた行動の方を見て、習慣としていくのが目的本位。こうした目的本位でルーティンを続けていると、自分の〝軸〟が定まり、結果的に安定した精神につながっていきます」と話す。
心穏やかに生きるヒントは、日々の暮らしで「できること」を怠らず、「できたこと」を見つめること。そして、怒りや悲しみに支配されそうなときは…「とにかく掃除!」なのかもしれない。