買い物から帰宅した79歳の男性が自身の自宅だけでなく、所有物や亡くなった息子の遺骨までもが重機で踏みつぶされ、撤去されるという衝撃的な事態に遭遇した。
ボブ・スウェイツ氏(79)は英ケント州北部のスワンズコム半島にあるブロードネス・クリークの傍らで、35年間にわたりトレーラーハウス(キャラバン)で暮らしてきた。1991年に結婚生活の破綻をきっかけにこの土地へ移り住み、電気やガスなどのインフラに依存しない生活を続けていた。
今年5月6日、同氏が買い物から戻ると、トレーラーハウスは跡形もなく解体されており、撤去を行ったのは同地の所有会社であるスワンズコム・デベロップメントを買収したランド・ロジカル社だった。
現在、スウェイツ氏は土地を巡る権利関係の法的争いが続く中、代替のトレーラーハウスを設置して現地に戻れるよう、仮処分の申請を求めている。
スウェイツ氏の代理人を務めるキーストーン・ロー法律事務所のエド・ジョン弁護士は本件は単なる不動産トラブルにとどまらないと裁判所で主張。「本件は一人の男性とその自宅だけの問題ではありません。法の支配と人間の尊厳に関わる問題です」と述べた。
さらに、ジョン弁護士は仮にデベロッパー側にスウェイツ氏の退去を求める権利があったとしても、自力で強制撤去するのではなく、明け渡し命令を取得すべきだったと指摘。「5月6日に電話を受けた際、言葉を失いました。このような行為に及ぶ者がいるなど信じられませんでした」と続けた。
弁護団はスウェイツ氏が12年以上その土地に居住していることから、取得時効(Adverse Possession)によって権利を取得している可能性があると主張している。
審理において、スウェイツ氏の弁護人を務めるデイヴィッド・フォーディック氏は、解体について「不法行為」であり「依頼人に対する不法侵入である」と批判。1999年から2025年にかけて撮影された航空写真を示し、トレーラーハウスが同じ場所に存在し続けていたことやスウェイツ氏の生活を記録した写真などを証拠として提出した。また、敷地に入るための鍵を渡されていた点についても「居住を認められていた証拠だ」と主張した。
一方、スワンズコム・デベロップメント側の弁護士は居住に関する建築許可や地方税の納付記録がない点を指摘し、実際にどれほどの頻度で居住していたかに疑問を呈した。さらに、セキュリティや保険上の懸念を理由に裁判官に対して仮処分申請を却下するよう求めた。キャサリン・ブラウン裁判官は本申請の審理を延期し、10月15日に決定を下す見通しだ。