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介護士が利用者による暴力で負傷→施設長「悪い噂が広まったら」労災申請拒否→泣き寝入り?【社労士が解説】

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介護士のAさんは、勤務先の老人ホームで利用者の着替えを介助していた。しかし利用者は着替えが思うようにできないことにいらだち、「早くしろ!」と言うなりAさんの顔面を殴った。その衝撃でAさんは床に倒れこみ、あまりの痛みにすぐには起き上がれないでいる。

利用者の大声を聞きつけた施設長が駆けつけたが、「お怪我はありませんか?」と真っ先に利用者の手を握った。その後、施設長はAさんを別室に呼び出し「利用者への配慮が足りなかったんじゃない?」と詰め寄った。

また、Aさんはこの一件で鼻に全治2週間の骨折を負ったと診断されたため、施設長に労災補償給付を申請した。ところが「施設の悪い噂が広まったら困るから、申請しないでほしい」と返され、話はうやむやに。仕事中に利用者からの暴行で顔に大怪我を負ったにもかかわらず、Aさんは泣き寝入りするしかないのだろうか。社会保険労務士の熊谷知直さんに話を聞いた。

会社に拒否されても労働者自身で労災申請は可能

ー会社が労災申請を思いとどまらせるような対応をするのは、許されるのでしょうか?

労災保険は労働者に認められた固有の権利であり、会社の判断で申請を止めさせるなどの対応は認められません。会社から「申請しないでほしい」と言われても、それに従う法的な義務はないのです。まずは、労災申請をするかどうかを決めるのは会社ではなく労働者自身だと理解しましょう。

ー事業主証明(労災の請求書に会社側が記入・押印する証明欄)を拒否された場合は、どのように対処すれば良いでしょうか?

事業主証明が得られない場合は、まず所轄の労働基準監督署に相談しましょう。証明欄が空欄であっても、監督署が独自に会社側へ事実確認を行い、労災に当たるかを判断してくれます。

あわせて、都道府県労働局の総合労働相談コーナーも利用可能です。また地域によっては、社会保険労務士会や労働組合が相談窓口になっている場合もあります。

なお、利用者からの暴力による労災は、「第三者行為災害」という特別な手続きになる場合があります。この場合は、通常の労災請求書とあわせて、「第三者行為災害届」を所轄の労働基準監督署へ提出してください。

ー利用者から暴行を受けて怪我をした場合、職員がその場で残しておくべき記録や、やっておくべきことがあれば教えてください。

まず、いつ、どこで、何をされたのか、時系列に沿ってメモに残しておきましょう。あわせて、怪我の状態をその場で写真に残しておくと、労災を申請する際の証拠として役立ちます。可能であれば、周囲にいた同僚にも状況を見てもらい、後で証言してもらえるようにしておくと良いでしょう。

また、医療機関はできるだけ早く受診し、診断書を受け取るのが大切です。受診の際に労災保険を申請する旨を伝えておくと、その後の手続きがスムーズに進みます。

◆熊谷知直(くまがい・ともなお) 社会保険労務士/社会保険労務士法人熊谷綜合労務事務所
北海道札幌市を拠点に活動。2006年に独立開業し、現在は社会保険労務士法人を運営。オンライン全盛の時代だからこそ顧客と直接顔を合わせることを大切に、地域に根差した労務支援を実践。労務相談をはじめ評価制度構築やセミナー講師などにも取り組んでいる。
▽社会保険労務士法人 熊谷綜合労務事務所ホームページ
https://srs-tk.info/

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