エアコンの室外機は、ベランダや家の裏手など、普段あまり目を向けない場所に置かれている。室内機と違って毎日操作するものではないため、家電というより建物の設備に近い感覚で受け止めている人も多いのではないだろうか。
会社員のAさんも、そのひとりだ。ベランダはさほど広くなく、物を置ける場所は限られている。そのため室外機の前のスペースは、物を置く場所として活用していた。
そんなある日、マンションの管理会社から配られたお知らせに「ベランダに物を置かないように」と書かれているのが目にはいった。避難のためだろうと読み流していたところ、どうやら火災の危険があるようだ。
そこでAさんは、念のためベランダに出て確認してみることにした。すると宅配便の段ボールが数箱、飲みかけのペットボトル、たばこの灰皿代わりにしている空き缶が、室外機のすぐ前に並んでいた。
Aさんの家のベランダにあるこれらの荷物は、すぐに撤去しないと火災の危険があるのだろうか。また、室外機の前に物を置くことは、実際にどの程度危ないのだろうか。製品事故に関する情報を収集して、調査・分析をおこなう製品評価技術基盤機構(NITE)製品安全広報課主任の丸田萌さんに話を聞いた。
夏は室外機の事故が最も多い しかし、稼働の有無に関わらず可燃物はおかないように
ーそもそも室外機の周りに物を置くと、なぜ事故につながるのでしょうか
じつは、室外機そのものから出火するケースよりも、周囲に置かれた物が先に燃え、その火が室外機に燃え移るケースのほうが多く報告されています。
過去には、室外機と周辺を焼損する火災が発生した事例があります。室外機にはビニール製のシートが掛けられ、飛ばないように天面へ水の入ったペットボトルが2本載せられていました。室外機に出火の痕跡が認められないことから、水の入ったペットボトルが虫めがねのレンズのように太陽光を集める収れん現象によってシートに火がつき、出火に至ったと考えられています。
つまり室外機が火を出したのではなく、周りの火に巻き込まれた形だったということです。周りに燃えやすい物がある限り、製品がどれだけ安全に作られていても事故は防げません。
ーではAさんのベランダにあったものは危険なのでしょうか?
かなり危険です。水の入ったペットボトルや、段ボールや新聞、雑誌、ごみだけでなく、たばこの灰皿置き場として使っている場合も危険なので、Aさんのベランダはそれらすべてに該当します。
水の入ったペットボトルについては、先ほどの事例のとおり収れん現象によって火災につながるおそれがあります。
段ボールやごみは、燃えやすいというだけではありません。置いたままにしていると小動物や虫などのすみかとなり、やがて製品の内部に入り込んで配線をかじったり、電源基板に接触したりすることで短絡し、発火するおそれもあります。
灰皿については、たばこの不始末が火元になることが考えられます。室外機の外側から火が付いて火災に至る事故が毎年報告されています。火の始末を完全におこない、燃えやすい物を近くに置かないようにしてください。
収れん火災やたばこが火元となり、可燃物である段ボールやごみなどに着火し、そこから室外機に燃え移る危険性があります。
ー室外機そのものから火が出ることはないのでしょうか。また、エアコンを使っていない時期なら安心といえますか
室外機の内部から出火する事故も報告されています。ただし件数としては、周囲に置かれた物から燃え移るケースのほうが多くを占めます。
そして、使っていなければ安全ということはありません。先ほどの事例は12月に発生したもので、当日エアコンは使用されていませんでした。ほかにも、電源プラグはコンセントに差さっていたものの運転はしていなかった住宅で、ベランダに置かれていた段ボール箱に入った家電や折りたたみ自転車から燃え移り、室外機と周辺を焼損する火災が起きています。
事故の報告は7月、8月といった気温が高い時期に多くなりますが、冬だから安全、動かしていないから安全ということではありません。エアコン火災による死者は、2021年度から2025年度までの5年間で7人にのぼります。
季節や稼働しているかどうかに関わらず、室外機の周辺には可燃物をおかないように注意してください。
◆丸田萌(まるた・もえ) 独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)
独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)製品安全広報課の主任
▽公式ホームページ
https://www.nite.go.jp/