周囲から「明るくて聞き上手」と思われているAさん。しかし、本人の内面は穏やかではない。実は人一倍、会話の沈黙を恐れているのだ。数秒でも言葉が途切れると、「私、変なこと言ったかな?」「場を盛り上げなきゃ」と心拍数が上がり、中身のない話をまくし立ててしまう。そして帰宅後には「あんなこと言わなきゃよかった」と1人反省会に励む日々を送っていた。
Aさんのような、会話の空白に耐えられない「沈黙パニック」にはどのように対処すればいいのだろうか。臨床心理士・公認心理師でもある恋活・婚活スクール【and her】の田口ともさんに、話を聞いた。
ーなぜ会話の沈黙を「拒絶」や「怒り」と誤認してしまうのでしょうか?
沈黙を「不機嫌のサイン」として捉えてしまう、過去の記憶や傷つきが刺激されている可能性があります。幼い頃に親が不機嫌になると急に黙り込んだり、誰かが怒っている時に場がシンと静まり返ったりした経験は、誰しも心に残りやすいものです。そのため、目の前で言葉が途切れた瞬間、脳が過去の「拒絶されたかもしれない」という警戒アラームを誤って鳴らしてしまうのです。
沈黙そのものは本来、ただの「時間が流れている状態」に過ぎませんが、過去の不安というフィルターを通すと、根拠のない「拒絶」として脳内変換されてしまうのです。
ー沈黙を怖がりやすい人の心理的背景には、どのような思考のクセが潜んでいますか?
「この場の居心地の良さは、100%自分のトーク力にかかっている」という、過度な責任感がありそうです。沈黙パニックになりやすい人は、Aさんのようにサービス精神が旺盛でとても優しい人です。しかしその反面、「場を盛り上げられない自分は価値がない」「相手を退屈させてはいけない」という極端な思考のクセが潜んでいます。
会話は自分と他者で一緒に創り上げる共同作業です。それなのに、沈黙の責任をすべて1人で背負い込んでしまうため、「何か喋らなきゃ!」と意識が自分に向きすぎてしまい、パニックに陥るのです。
ー言葉が途切れた時、相手は実際どのような心理状態であることが多いのでしょうか?
大抵の場合、ただ「次に話すことを考えている」か、「心地よくリラックスしている」だけです。焦っている側は数秒の沈黙を「永遠に続く気まずさ」のように感じますが、相手は「さっきの話、面白かったな」と余韻に浸っていたり、「次は何を話そうかな」と楽しくネタ帳をめくっていたりすることも多いのです。
「この人といると、無理に喋らなくてもいいから楽だな」と安心感を覚えていることさえあります。少なくとも、相手側の心理は「拒絶」1択ではない、ということを知っておいてください。
ー気まずい沈黙を「心地よい沈黙」に書き換えるためのアドバイスをお願いします。
沈黙を「あってはならないもの」ではなく、「関係が深まるサイン」だと前提を書き換えてみませんか。「沈黙は気まずいもの」と定義するから怖くなりますが、実は沈黙を共有できることこそが、相性の良さや信頼の深さの証明でもあります。
沈黙を恐れているうちは、意識が相手ではなく『沈黙そのもの』にばかり向いてしまっています。「沈黙は悪ではなく、2人が安心して過ごせている余白の時間」。そう捉え方が変わるだけで、焦る必要はなくなり、お互いの信頼の上に成り立つ「心地よい沈黙」へと変わっていくはずですよ。
◆田口とも(たぐち・とも) 臨床心理士/公認心理師/LCIQ®︎診断士
「どうせ自分なんて恋愛も結婚もできない…」と自信をなくしている方の背中をピシッとさせてポンッと押したい、という想いから恋活/婚活スクール【and her(あんどはあ)】を運営。あなたを「また会いたい」そして「ずっと一緒にいたい!」と思われる人に育てます。