新幹線の窓際席で携帯電話に着信があった。席を離れて通話のできるスペースに移動しようとしたものの、通路側に座っている人が座席のテーブルを下ろしたまま熟睡していて出られない…といった状況になった時にどう対応すべきだろうか。相手を起こして進路を空けてもらうか、車内のマナーを度外視して自分の席で通話するか。公共交通機関での“悩ましい出来事”の打開策について、「大人研究」のパイオニアとして知られるコラムニストの石原壮一郎氏が提言した。
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【今回のピンチ】
新幹線の窓際の席に座っていたら、上司から急ぎの用件で電話。通路側の女性はグッスリ眠っている。起こしてデッキに移動するか、席で小声で話したほうがいいか?
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いつの間にか、新幹線はとても神経を使う乗り物になりました。シートの倒し方やら豚まんやら、「マナー違反ですよ!」と言われそうな項目が増えて、常にまわりの目が気になってしまいます。同時に自分の側も、乗り合わせた乗客のちょっとした行為がやたら目に付くようになってはいないでしょうか。
マナーを守られない人が増えたのか、誰もが心に余裕をなくしているのか、その両方なのか……。いろんな人が乗る「公共交通機関」なのですから、多少のことは許し合って、大らかな気持ちで過ごしたいものです。
それはそれとして、窓際の席ならではのピンチに見舞われてしまいました。上司の電話の内容は、それまでの仕事の流れから想像が付きます。急を要する重要な件で、しかもメールのやり取りでは十分に伝わりません。
通路側の女性は、グッスリ眠っている上、テーブルを開いて上にスマホなどが載っています。自分が通路に出るには起きてもらうしかありません。それは申し訳ないからと席で通話したら、周囲の乗客に「チッ、なんて非常識なヤツだ」と軽蔑されそうな気がします。さてさて、どうすればいいのか。
急を要する大事な電話なら、落ち着いて話すためにもデッキに移動しましょう。とり急ぎ上司には「すぐかけ直します」といったショートメールを送った上で、女性を起こしてテーブルをたたんでもらいます。
そこで大切なのは「どれだけ感じのいい人になれるか」。屁理屈を言えば、悪いのはテーブルを開いたままグースカ寝ている側で、こっちが気をつかう必要はないとも言えます。だからといって、無言のまましかめっ面で圧をかけて、相手を恐縮させるのは、あまりにもカッコ悪い態度と言えるでしょう。
起こそうとして身体に触れたら、厄介な誤解を招きかねません。まずは立ち上がってオロオロしつつ、テーブルを少し動かそうとしたりして、起きてくれるのを待ちましょう。
目を覚ましたら「お休みのところ申し訳ありません」と謝りつつ、そっと通路に出ます。わざわざ立ち上がってくれるケースもあるでしょう。通路に出たあとは、「ありがとうございます」のお礼も忘れずに。
電話が終わって、ふたたび席に戻ってきたときの振る舞い方も大切。「失礼いたしました」と丁寧に頭を下げれば、起こしてしまった申し訳なさは払拭されるでしょう。
仮にその女性が「こっちが下手に出ると強気に出るタイプ」で、露骨にムッとした態度を取ってきたとしても、こちらの対応に変わりはありません。礼儀正しく振る舞うことで、筋違いの不愉快な対応をしてくる相手を「哀れなヤツだな」と見下すことができます。
「そこまでする必要ある?」と思う方もいるでしょう。微妙な状況や不愉快な場面において、精いっぱいの礼儀正しさは自分を守る盾になってくれます。礼儀正しさは人のためならず、ということですね。