ノーベル賞受賞者の理論物理学者が、核戦争や人工知能(AI)の脅威により、人類は数十年以内に絶滅の危機に瀕する可能性があるとの警告を発した。
2004年にフランク・ウィルチェック氏、ヒュー・デイヴィッド・ポリッツァー氏と共に「漸近的自由」に関する研究でノーベル物理学賞を受賞したデイヴィッド・グロス氏(85)は、最近のインタビューで物理学の未来と世界の安定性について考察した。基礎物理学分野で300万ドル(4億5000万円)のブレイクスルー賞も受賞しているグロス氏は、物理学の「統一理論」が50年以内に確立される可能性について問われた。
しかし、グロス氏の回答は、核拡散、地政学的な不安定さ、そしてAIの急速な進歩を挙げ、人類そのものがそれほど長く存続できない可能性に焦点を当てたものだった。グロス氏は科学系ニュースサイト「ライブ・サイエンス」に対し、「現在、私は時間の一部を、人々にこう伝えることに費やしている。『あなたがあと50年生きられる可能性は極めて低い』と。核戦争の危険性を考慮すると、残された時間は約35年だ」と語った。
グロス氏は、この推定を「大雑把なもの」と表現しつつも、冷戦終結以降、壊滅的な紛争が発生する確率が著しく高まっていると示唆した。「冷戦が終わり、戦略兵器管理条約が存在していた時期でさえ(それらの条約はすべて消滅してしまったが)、核戦争の発生確率は(毎年)1%と推定されていた。この30年で事態は著しく悪化した。新聞を読むたびにそれがわかるはずだ。私の見立てでは、その確率は2%程度ではないかと考えている。つまり、毎年50分の1の確率ということだ」
グロス氏は続けて、「(年間)2%という確率の場合、予想される残存期間はおよそ35年だ」と述べた。また、9つの核保有国と、グロス氏が「3つの超核大国」と呼ぶ国々によって形作られる世界情勢に言及し、軍備管理協定の崩壊が、より不安定で予測不可能な環境を生み出したと主張した。
グロス氏は、ロシアとウクライナ間の戦争をはじめとする継続中の紛争や緊張、米国、イスラエル、イランを巻き込んだ地政学的摩擦、そしてインドとパキスタンの長年にわたる対立などを列挙した。
さらに、新興技術がリスクを増大させる可能性についても警告した。AIによるシステムが軍事的な意思決定プロセスにますます組み込まれるようになり、その速度、信頼性、制御に関する懸念が高まっているという。指導者が認識された脅威に対応する時間が限られている状況では、意思決定を自動化システムに委ねるよう圧力がかかる可能性があるとグロス氏は指摘する。
グロス氏は、AIが「幻覚」を起こし、信頼性の低い出力を生成する恐れがあると述べ、重大な局面においてこうしたシステムに依存することは、危険を軽減するどころか新たな危険を招きかねないと示唆した。最後に、人類が直面するリスクを軽減するためには、国際的な対話と協力を再活性化することが重要であると強調し、世界的な規範や合意の崩壊により、世界が壊滅的な結果にさらされやすくなっているとして警鐘を鳴らした。