akiya_b

俳優・毎熊克哉、巨匠監督とのタッグで社会派映画2本に主演 不惑を前に「自分がどこまでやれるのか?」

北村 泰介 北村 泰介
高橋伴明監督による2本の主演映画を振り返り、30代最後の年への思いを語る俳優・毎熊克哉=都内
高橋伴明監督による2本の主演映画を振り返り、30代最後の年への思いを語る俳優・毎熊克哉=都内

 ミニシアター系映画からNHK大河ドラマまで幅広く活躍する俳優の毎熊克哉(38)が、1970年代から力作を世に出してきた高橋伴明監督(76)とタッグを組んだ。毎熊は、2026年1月に全国公開される高橋監督の最新作「安楽死特区」に、今年7月公開の「『桐島です』」に続いて主演。この2作で共闘した監督との舞台裏、30代ラストイヤーにかける思いなどを聞いた。

 毎熊は1987年生まれ、広島県出身。2016年公開の主演映画「ケンとカズ」(小路紘史監督)で数多くの映画賞を受賞して注目された。その後も、主演作では「私の奴隷になりなさい」シリーズの第2作と第3作(18年、いずれも城定秀夫監督)、バイプレイヤーとして「猫は逃げた」(22年、今泉力哉監督)、「冬薔薇」(22年、阪本順治監督)などで存在感を発揮。テレビでは24年放送の大河ドラマ「光る君へ」の直秀役で一般層への知名度もアップした。

 今夏公開の「『桐島です』」では、75年の連続企業爆破事件に関与したとして指名手配され、逃亡中も偽名で生活しながら24年1月29日に70歳で死去する直前に病院で正体を明かした桐島聡元容疑者の半生を演じた。

 「⾃分にとっては『ケンとカズ』という映画が出発点だったと思うんですけど、『桐島〜』で演じた⼼優しい指名⼿配犯もある意味ではバイオレンスで、宿命のようなものを感じました。。しかも、(上映)メイン館の新宿武蔵野館(東京)では3か⽉ほどのロングランになった。この映画がどう評価されるかは分からないですけど、事実として、それだけ長いこと上映され、いろんな方が『よかった』と言ってくださったことは自分にとって励みになりましたね」

 毎熊にとって、桐島は時代的にも思想的にも全く交わらない人物だが、別世界の人間になりきることは役者冥利に尽きる。偽名で職場や常連の音楽バーといったコミュニティーに溶け込んだ、身長160センチ前後といわれる桐島のイメージとは異なる180センチの長身ながら、その日常を自然体で表現した。

 「逃亡生活の中でもあまりにも普通すぎてバレなかったんじゃないかと思いますね。(『内田洋』と名乗って)周りから『ウッチー』とか『ウーやん』とか呼ばれて。彼がどういう人だったかということは、その人によってみんなそれぞれ違う気がして、そこが難しくもあり、面白い。想像のし甲斐があるというか」

 高橋監督のもと、両作の撮影は連動していた。毎熊は「監督から同時に2本やってくれという話で、また、えらい難しいやつを2本も抱えたなと。去年の夏に『桐島~』を撮ってから3~4か月後の冬にこちら(『安楽死~』)の撮影に入りました」と明かす。

 「『桐島~』について高橋監督はその時代の空気感を知っておられるので、あの時代に自分はどう思っていたか…みたいな話は聞かせてもらいましたけど、そこまで多くを語る⽅(かた)ではないので…。現場で『ああだこうだ』と言うこともなく、『脚本を読んで感じたことを芝居で見せてくれ』と黙ってこちらを⾒ていました。監督の『TATTOO<刺⻘>あり』(82年公開、宇崎⻯童主演)など古い作品は配信で観ました。怖い監督というイメージがありましたけど、現場ではただ、じーっと⼈のことをよく⾒てるなと思いました。監督として、男として、器が⼤きい。そんな監督の方向性を感じ取れてから2本目に入れたのは良かったかもしれないです。作風としては『桐島~』の方がさわやかで、『安楽死~』はハードボイルドというか」

 都市部のミニシアターに足を運ぶ映画ファンだけでなく、テレビドラマ出演によって周囲の見る目も変わった。

 「ミニシアターに舞台挨拶に⾏ったら、『⼤河ドラマを観ました』と、おそらく普段はあまり映画館に⾏かないお客さんに声をかけられました。その映画はノーマークだった⼈が『毎熊が来るから』って、テレビをきっかけに映画に出会ってくれるなら、それはとても重要なことだなと思いますね。その逆も然り、⽂化が交わるのは素敵なことです」

 年が明ければ、30代最後の年となる。毎熊は「自分が『ケンとカズ』で初めて人前に出てから10年。さらに次の10年へと向かう年の初めに『安楽死~』が公開される。40代に向けてのステップを踏むタイミングで、高橋伴明監督と重要な映画2本を撮れたことが『次の10年をどうやって頑張っていくか』という力になったことは間違いないです。自分がどこまでやれるのかということを40代ではいろいろ試してみたいです」と誓った。

よろず〜の求人情報

求人情報一覧へ

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース