やはりジェームズ・ボンド!洋画の魅力改めて伝えた 邦画は若手監督の才能光る 21年映画を語る

伊藤 さとり 伊藤 さとり

◆2021年の洋画メジャーはジェームズ・ボンド

2021年もコロナ禍の影響から映画界も多大なる影響を受けていました。そんな中、映画館と配信の同日公開を生み出したディズニー映画が、マーベル映画『シャンチー』の公開から劇場公開を先行する事を9月に発表。これは映画館存続を考えると吉報となりました。

またトム・クルーズ主演『トップガン マーヴェリック』は、日米同時公開で2022年5月27日とし再び延期が決定し、日本公開もそれまでお預け。他にもスティーブン・スピルバーグ監督がミュージカル映画の金字塔をリメイクした『ウエスト・サイド・ストーリー』が公開延期を発表し、日本では2022年2月11日に公開。このようにハリウッド大作が軒並み延期の中、幾度となる公開延期を乗り越え、ついにダニエル・クレイグ版ボンドの最後を飾る『007 ノータイム・トゥ・ダイ』が公開されました。本作はIMAXで見るにふさわしいダイナミックなアクションとミステリーで多くの観客が足を運び、洋画の魅力を存分に世間に知らしめました。

◆2021年は日本映画のオリジナル脚本が豊作

いっぽう、邦画はオリジナル脚本の映画が豊作。菅田将暉&有村架純共演、「東京ラブストーリー」「カルテット」などの人気脚本家・坂元裕二による書き下ろし、『花束みたいな恋をした』(土井裕泰監督)が老若男女に受け大ヒット。

他にも『新聞記者』の藤井道人監督が綾野剛主演でヤクザと彼らの家族の行く末を描いた『ヤクザと家族』、また吉田恵輔監督は松山ケンイチさん主演の負け試合担当のボクサーの物語『BLUE』と古田新太主演、娘を事故で失った男の怒りと巻き込まれた人々の苦悩を描いた『空白』というオリジナル作品2本を公開、東京国際映画祭で監督特集上映も企画されました。

更に石井裕也監督もオリジナル作品を2本発表。尾野真千子主演『茜色に焼かれる』では、コロナ禍で水商売をしながら子どもを育てるシングルマザーの生き様を描き、『アジアの天使』では、池松壮亮とオダギリジョー演じる兄弟が、韓国で仕事を成功させようする中で出会う韓国人家族との日々を描いたロードムービーです。

そして『ドライブ・マイ・カー』でカンヌ国際映画賞脚本賞他、世界の映画賞席巻中の濱口竜介監督による現在公開中の新作『偶然と想像』は、3編によるオリジナル脚本の映画で、ベルリン国際映画祭(銀熊賞・審査員グランプリ)を受賞しています。

◆注目の若手インディーズ監督たち

 実は今年の日本映画は、新進気鋭の若手監督たちの才能が光る年でもありました。

まず新藤兼人賞銀賞を受賞した『JOINT』は、1994年生まれで現在27歳の小島央大監督によるオリジナル作品であり、本作で長編映画監督デビューとなりました。物語は東京を拠点とする現代の裏社会を描いたバイオレンス映画でありながら、血なまぐさいシーンは削ぎ落とされ、陰影を巧みに使い、立体的な構図と、登場人物の横顔を影で見せながら“何故、その仕事をするのか”という成育環境と人との絆に焦点を当てた群像劇になっています。確かに今までの日本のヤクザ映画とはまったく違う毛色を持つ色合いとカメラワークは、小島監督がニューヨーク育ちで東大建築学科卒という経歴を聞くと、やや納得してしまう独特のセンスなのです。

 そしてもう一本忘れてはならないのは、7月31日に公開され、ロングランヒットを記録した『ベイビーわるきゅーれ』という作品です。

本作の監督は1996年生まれで現在25歳という阪元裕吾。これまでもアクション映画やバイオレンス映画を作ってきた阪本監督が、元女子高生の殺し屋コンビの日常を軸として、本格的なアクションをこれでもかと見せつけつつ、小気味の良いセリフ回しで笑いを誘う痛快バディムービーをオリジナル脚本で発表。しかも主演の二人がとにかく魅力的!ガンアクションと愛くるしい風貌なのに喋りだすとクレイジーなちさとを演じた高石あかりは、舞台「鬼滅の刃」で竈門禰豆子を演じた注目株。そしてまひろを演じた伊澤彩織は、現役のスタントウーマンだけあり、見事なまでの艶やかな動きと魅せるアクションで男性との肉弾戦を繰り広げます。更に続編決定も発表され、今後、期待しないわけがない若き才能が集結した娯楽作でした。

 このように2021年は、大手映画配給会社の枠にはまらず、独自の感性を大事にしながらしなやかにインディーズで映画を生み出す監督たちの才能が評価された年でした。さて、来年はいったいどんな映画が日本を席巻するのか?楽しみでなりません。

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