akiya_b

天涯孤独な私の遺産はどうなる?遺言書は誰のため?“おひとりさま”の終活【行政書士が解説】

夢書房 夢書房

独身で頼れる親族がいない、いわゆる「天涯孤独」の状態で、終活を意識し始めたものの「財産を渡す相手もいないし、遺言書なんて面倒なだけ」と考えている方も少なくないであろう。相続人がいない場合、その方の財産は最終的にどうなるのか。北摂パートナーズ行政書士事務所の松尾武将さんに聞いた。

ー法定相続人が一人もいない場合、遺言書がなければ財産は最終的にどうなりますか?

法定相続人が存在しない場合、遺言書がなければ、単純にいうと最終的に財産は国庫に帰属します。手続きとしては、家庭裁判所が相続財産清算人を選任し、故人の借金などを清算した後、残った財産が国に帰属します。

手続きには時間がかかるため、その間、財産は宙に浮いた状態になります。近年では、親族がいない人が増えており、国庫に帰属する遺産は増加傾向 にあるようです。

ー法定相続人ではない人に財産を遺すことはできますか?

もちろん可能です。法律上の相続人でなくても、遺言書を通じて、お世話になったご友人や事実婚のパートナー、介護をしてくれた方など、ご自身が望む相手に財産を遺せます。これを「遺贈(遺言による贈与)」といいます。

ただし、遺言書がなければ、法定相続人以外の方が財産を受け取ることは原則としてできません。ご自身の最後の意思を確実に実現するためにも、法的に有効な形式で遺言書を作成しておくことが重要です。

ー特定のNPOや自治体、母校などに財産を「寄付」することは可能ですか?

はい、可能です。社会貢献や出身地・母校への恩返しといった形で、ご自身の財産を役立てることができます。なお、遺贈による寄付は受け取りを拒むこともできます。金銭による寄付が拒まれることは少ない一方で、不動産、有価証券などの場合には寄付を拒まれることが少なくありません。寄付を検討する場合は、事前に寄付先の団体に連絡を取り、受け入れが可能かどうか確認しておくと、遺贈による寄付がよりスムーズに進むでしょう。

ー「天涯孤独」の人が、元気なうちに準備しておくべきことは何ですか?

ご自身の財産や希望を明確にする「遺言書」の作成が最も簡便かと考えます。それに加えて、もしもの時に備えておくことも大切になります。

例えば、認知症などで判断能力が低下した場合に、信頼できる人に財産管理や入院手続きなどを任せるための「任意後見契約」や、亡くなった後の葬儀や埋葬、役所への届け出といった手続きを託す「死後事務委任契約」を結んでおくと安心です。

また、法的効力はないものの自身の希望を周囲に伝えるための「エンディングノート」に延命治療の意思や希望の葬儀形式などを書き記しておくことも最終意思を表示する方法のひとつとして有用でしょう。

これらの準備は、ご自身の尊厳を守り、安心して老後を過ごすために不可欠です。お一人で抱え込まず、専門家や支援サービスに相談することも検討してみてください。

◆松尾武将(まつお・たけまさ)/行政書士

長崎県諫早市出身。前職の信託銀行時代に担当した1,000件以上の遺言・相続手続き、ならびに3,000件以上の相談の経験を活かし大阪府茨木市にて開業。北摂パートナーズ行政書士事務所を2022年に開所し、遺言・相続手続きのスペシャリストとして活動中。ペットの相続問題や後進の指導にも力を入れている。

よろず〜の求人情報

求人情報一覧へ

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース