海外のオンラインカジノサイトで賭けをしたとして、著名人に対する摘発や事情聴取の報道が続き、改めて「違法」であることに焦点が当てられている。日常生活のツールとなったスマートフォンなどを介して、実際は「賭博」(犯罪)でありながら〝ゲーム感覚〟で手を出す人が急増しているという中、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏にその実情や今後の動きについて聞いた。
1月29日、千葉県警が海外のオンラインカジノサイトで賭けをした賭博の疑いで、東京五輪(2021年)卓球男子団体で銅メダルを獲得した丹羽孝希選手(30)を書類送検したことが報じられた。2月5日には、吉本興業が所属タレントに「コンプライアンス違反の疑い」が判明したと公表。現時点で、お笑いコンビ2組のそれぞれのメンバー(計2人)がオンラインカジノでの賭博容疑で警視庁から事情聴取を受けていたことが報じられている。
警察庁の公式サイトには「海外で合法的に運営されているオンラインカジノであっても、日本国内から接続して賭博を行うこと」は「バカラ、スロット、スポーツベッティング等、その名称や内容にかかわらず犯罪です」と明記されている。
小川氏は「インターネットを介したオンラインカジノに関して一部SNS等に『海外のサイトなら問題はない』等との情報が出回っていますが、日本国内からインターネットを介して賭博を行うことは犯罪です。賭博をした者は『賭博罪』で50万円以下の罰金または科料、常習的に賭博をした者は『常習賭博罪』で3年以下の懲役となります」と補足。さらに「昨年の(オンラインカジノにおける)賭博客の摘発は暫定値で162人と、前年の53人から3倍超に急増しています」と指摘した。
その背景として利用者に「犯罪意識」が希薄なことが挙げられる。SNSでは有名セクシー女優がオンラインカジノをPRするといったポストも目にした。〝ゲーム〟であるという「誤解」と「好奇心」が入り口になっているともいえる。
小川氏は「(PRの)サイトを見ると『海外のカジノだから日本国内でやっても違法ではありません』といったことが書かれていますが、それは間違いで、違法です。しかし、SNSでは『グレーゾーンだから捕まらない』といった声が多数あるのも事実。インターネットを介したオンラインカジノには300万人以上の国内利用者がいるという推計もあり、昨年は160人以上もの検挙者が出ていながら、著名人が含まれていないこともあってほとんどニュースにならず、抑止力が働いていなかった」と経緯をたどった。
その上で、同氏は「そうした抑止力につながるという意味で、今回は〝見せしめ〟ではないですが、卓球の元五輪メダリストやM-1グランプリの決勝まで行ったお笑い芸人といった有名人が関与していたことによって大きく報じられることになった」と背景を解説した。
実態について、小川氏は「無料のサイトでは初めにコインが無料でもらえます。それは1円にもならない単なるゲームで、やれば勝てるようになっているので、『これで賭けたら、千円で10万円くらいもうかる』などと思って、ついついやってしまう。実際、やった人に取材した話では『(賭け金が)千円とか、1万円とかの時は勝てるんだけど、金額が大きくなると、勝てなくなるんです』ということでした。その負けを取り返すために借金をしたり、オンラインカジノの負けをオンラインカジノで取り返そうとして、最終的に借金でどうしようもなくなる。昨年などは、それで闇バイトに応募した者も多くいました」と説明した。
小川氏は「丹羽選手は賭博に興じたことは認めていますが『違法とは知らなかった』と話していて、私もそうなのだろうと思います。お笑い芸人も事実については認めているということですが、芸人の中にはふだんからオンラインカジノの話をしている人たちがいるということで、犯罪という意識が薄い。捜査関係者によると、他の芸人についても捜査が進められているということです」と付け加えた。
オンラインカジノによる賭博は、借金を重ねて「闇バイト」に手を出し、さらなる凶悪犯罪につながるという危険性もはらんでいる。小川氏は「そうしたことも背景に、犯罪抑止のため、著名人の摘発によってニュースにする流れになっているのではないか。警察はさらに摘発に力を入れいくというところです」と現状を語った。