社会人の情熱がリングで爆発「有給プロレス」〝聖地〟後楽園ホールを満員に「5~10年後には両国に」

山本 鋼平 山本 鋼平
大会を終えて達成感に満ちた表情のきしだくん(中央)ら「有給プロレス」出場選手、スタッフ
大会を終えて達成感に満ちた表情のきしだくん(中央)ら「有給プロレス」出場選手、スタッフ

 社会人になってもプロレス愛は不変だ。学生プロレスOBによる大会「ギャル男くん興行Presents社会人プロレス後楽園ホール大会~有給取って、プロレスします。」(有給プロレス=28日、東京・後楽園ホール)が開催された。同大会を成功に導いた「きしだくん」こと、本職はコンサルタントの有給プロレス代表・岸田翔太さん(34)に、激闘から一夜明けた29日に話を聞いた。

 満員の聖地が沸騰した。メインできしだくんはアスカ・ザ・ワールド(不動産営業職)と組み、児―ポ監督(精肉マネジャー)&ハミ・TⅡ・ジロー(専門商社営業)組と激突。終始劣勢の肉弾戦をカウント2で耐え抜き、最後は敬愛するトリプルH、JBL(ジョン・ブラッドショー・レイフィールド)ばりのシモキタンラリアットでジローを粉砕。39分46秒の死闘を制した。

 きしだくんが「この期末で忙しい中、仕事を終えて我々の趣味の社会人プロレスを見に来ていただき本当にありがとうございました。社会人プロレス、楽しかったですか」と訴えると、大「きしだ」コールが発生。「社会人プロレスをやっているのは我々だけじゃありません。今日出たCWPという団体、AZW、nkw、WIN、RAW、健康プロレス…社会人プロレスっていっぱいあるんですよ!そんな仲間たちとこうやって、土日や、会社の有給とってプロレスやってます。是非また、見に来てください!」と挨拶。温かい拍手を受け、リングに上がった全選手とスタッフを背に「有給プロレス!」と叫び、呼応した観客ら全員で「ダー!」と拳を突き上げ、大団円を迎えた。

 一夜明け、きしだくんこと岸田代表は「昨晩は5時まで打ち上げがありましたが、少し寝たのでもう大丈夫です」とたくましかった。「本当に楽しかった!」と声を弾ませた。

 岸田代表は東京都出身。高校時代までサッカー、水球に励み、早稲田大学進学後にUWF関東学生プロレス連盟(早稲田、慶応、駒沢、法政、東海、中央、東洋など)に所属。格闘技経験がなく、ボコボコにされながらも戦い続けた。大学時代には後楽園ホールで開催された「学生プロレスサミット」に参戦。全国の他学生プロレス団体とも顔を合わせ、プロレスの魅力にハマっていった。

 卒業後はシステムエンジニアとして働きながら、学生時代から親交の深いプロレスラー大谷譲二が約10年前に立ち上げたアマチュア大会「ギャル男くん興行」に参加。週に1回は仲間と集まり、受け身や実戦練習を行い、年に2、3回開催される大会に備えた。約8年前からは運営も担うようになった。会場の予約、設営、マッチメイクを仲間と行う。「皆が仕事をしながら、趣味としてプロレスを続けている。楽しむためにはどうすればいいか、話し合ってきました」。転機は昨年11月の大会だった。満足できるパフォーマンスをリングで発揮し「全盛期が来た、というくらい調子が良かった。プロレスの聖地、後楽園でプロレスをやりたいと思いました」と打ち上げで決意表明。「ギャル男くん興行」を発展させた「有給プロレス」の準備が始まった。

 普段はキャパ100人程度の会場を使用する。「後楽園は規模が大きくて大変でした。普段のメンバーはイベントのノウハウがないので」と困ったが、学生プロレスの人脈が生きた。日本を代表する格闘技イベントで働く後輩、大手SNS企業に勤める先輩に力を借りた。主に広報面で、社会人プロレスのファン以外にも認知を広げる計画が進んだ。学生時代から縁がある社会人レスラーに加え、大谷譲二ら学生プロレス出身のプロレスラー、そして同志社大で学生プロレスに励んだ協力者のツテで同大出身のレイザーラモンHGの参戦が決まった。SNS、ホームページをはじめとした積極的なプロモーション活動、プロ団体の応援も受け、チケットは完売した。

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