公開中の劇場版アニメ「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」(福田己津央監督)のヒロイン、ラクス・クラインの誕生日を翌日に控えた4日、東京・新宿ピカデリーで「ラクス・クライン生誕記念舞台挨拶」が実施された。ラクス役の田中理恵、キラ・ヤマト役の保志総一朗、オルフェ・ラム・タオ役の下野紘が登壇し、サプライズで福田監督が登場した。
公開9日間で動員112万人、興行収入18億円を突破。下野は「ラクスとキラとオルフェの三角関係が、主軸として動いているというのが言えるようになっただけでもだいぶ楽になりました」と、謎のベールに包まれたキャラクターを演じた故のもどかしさを告白しつつ、「オルフェがいたから『ガンダムSEED』の主人公が近付いたのは嬉しいですよね。オルフェとしては、ラクスとキラに出会わなければオルフェ自身も決められたレールを走っていくだけだったんだろうなと思いますし、オルフェにとっての壁がキラとラクスによってもたらされたからこそ、この戦いに発展していった気がします。オルフェも成長していったんじゃないかと思います」と自身のキャラクターへの思いを口にした。
田中は、“愛”のテーマの象徴ともいえる「必要だから愛するのではありません、愛しているから、必要なのです」というラクスのセリフについて「このセリフはアニメーションに関わらず、自らがこういう風に言われたら、ぐっとくるなっていうセリフだったので、それを泣きながらどうやってオルフェに伝えようか頑張りました」とアフレコを振り返った。
下野はラクスから拒絶されるオルフェを「あそこまで拒否されると思っていなかったし、彼の中では相当ショックだったと思います。でもラクスを押し倒したり、ちょっとオルフェ、お前やりすぎ!」と自身のキャラに突っ込むと、すかさず田中も「私もすごいびっくりしました!オルフェ、…触ってましたよね?」と劇中のシーンについて言及。「触ってないです!」とオルフェへの疑いを否定する下野だったが、「ただ『SEED』自体が結構そういうシーンありますからね?」と保志に視線を向けた。
保志は「何の話を蒸し返そうとしてるのかな。『SEED FREEDOM』の話をしてください」と返答し、会場は笑いに包まれた。
田中は続けて該当シーンについて「オルフェが部屋を出ていった後、ラクスが泣くじゃないですか。オルフェに対しては毅然として、すごんでみせましたけど、本当は怖かったんだろうなと思いましたし、あのシーンは本当に切ないなと思いながら頑張ってお芝居しました」と振り返った。
ここで、サプライズで田中宛に福田監督からの手紙が届き、MCが代読した。
「ラクス・クライン誕生日おめでとう。そして理恵ちゃん。ガンダムSEED放映から20年以上ラクス・クラインを演じてくれて、ありがとう」
「理恵ちゃんの声と芝居がキャラクターに深みと感情の豊かさを与えてくれて、ラクスがファンの人たちにとっても特別なキャラクターになったと思います。特に今回のFREEDOMは良かった」
「透き通るような歌声は、今回は披露することは出来なかったですが、ラクスというキャラクターの思いを伝えてくれる素晴らしいものでした。理恵ちゃんの熱意と才能によって、ラクスが生き生きと画面の中で動き、ファンの共感を呼び起こしてくれました」
「20年前を覚えていますか?ラクスとしての初めてのアフレコ。どちらかといえば、メインキャストの中では後発で参加する形でしたが、それでも現場に早く溶け込もうと、必死に頑張っている理恵ちゃんの姿が今も思い出されます」
「本当にこの20年は出会いと別れの連続でした。私たちは数々の人と出会い、共に笑顔を分かち合いました。友人、仲間、恋人、夫婦、家族、私たちの人生に彩りを添え意味を与えてくれる存在。しかし、出会いは別れとも結びついています。私たちは愛しい人を失い涙しました。その痛みは心に深く刻まれ、喪失感を与え、大切なものの尊さを思い出させてくれました。出会いと別れは私たちの人生の旅路の一部であり、その重みが私たちを成長させてくれました。これからも新しい出会いと別れは訪れるでしょうが、それは私たちの命の豊かな一部であり、その中で新たな感動と成長を見つけていくでしょう」
「泣き、笑い、出会いと別れ。たとえガンダムSEEDが終わったとしても、私たちの物語はこれからも進んでいきます。ガンダムSEEDの中でラクスはあなたのおかげで魅力的で記憶に残る存在になりました。その貢献に心から感謝します。今後の活躍も楽しみにしております。ありがとうございました。追伸、そういえば下野くん。オルフェも誕生日おめでとう。…一応ね」
これらの心のこもった手紙の内容に、田中は涙を流した。すると福田監督がサプライズで駆けつけ、田中と下野に花束を贈呈した。
福田監督が「書いているうちに盛り上がっちゃって手紙が長くなっちゃいました。これ読んだら泣いちゃうかなぁって。でも書いてあることは本当です」と言葉をかけると、田中は「感動しすぎて、涙腺が崩壊してしまいました。アフレコのときの両澤さんとのことも想いましたし、だからこそ悔いが残らないようにしっかりやろうと思って臨みました」と感謝を示した。テレビアニメの脚本を担当した両澤千晶さんは、福田監督の妻で2016年に死去した。
キャストが一時降壇している間、監督が会場のファンの方からの質問に答えるという嬉しいサプライズも。そして最後にはラクスにむけ、ピンクのハロがあしらわれた特製のケーキが登場し、「ピンクのハロだ!可愛い!」と笑顔を見せる田中。保志と下野、監督さらに客席からの「ハッピバースデ~ラクス!」の声が響き会場が祝福ムードに包まれた。