「ルフィ」田中真弓と「チエ」中山千夏が初共演 レジェンド2大声優が語る古き良き現場とコロナ後の変化

北村 泰介 北村 泰介
初対面で軽快なトークを繰り広げた声優の田中真弓(左)と作家の中山千夏=静岡・伊東市ひぐらし会館ホール
初対面で軽快なトークを繰り広げた声優の田中真弓(左)と作家の中山千夏=静岡・伊東市ひぐらし会館ホール

 今年で放送25周年を迎えたフジテレビ系人気アニメ『ONE PIECE』で、主人公のモンキー・D・ルフィの声優を務めてきた田中真弓(69)と、テレビアニメ『じゃりン子チエ』(毎日放送製作、1981-83年、91-92年放送)の主人公・チエの声を担当した中山千夏(75)が静岡県伊東市で開催された舞台で「初共演」するという貴重な場面があった。(文中敬称略)

 1月27日に行われた『スセリ☆台本劇場in伊東3』での一幕。女性芸人のオオタスセリ(63)が作・演出、多彩なゲストを迎えた舞台シリーズで、伊東市では市民グループ「新生 市民劇場」の主催で今回が3回目の開催となった。田中は都内での同公演でオオタと何度も共演しているが、伊東の舞台は初めて。伊東市在住の中山は市民劇場の一員で、昨年の公演に出演したが、田中とは今回が初対面だった。

 「ルフィ」と「チエ」が「声優の仕事」を語り合った。オオタの紹介でステージに招かれた中山は開口一番、「お会いするのを楽しみにしていたんです。私、クリリンが大好きなので!」と田中に告白。アニメ『ドラゴンボール』で主人公・悟空の兄弟弟子で親友のクリリンの声を務めている田中は「クリリン好きな人は珍しいですよ。『悟空が好き』という人が多いですから」と驚きつつ、作品を観ている中山の言葉にうれしさをかみしめた。

 田中は「私は昭和30年生まれなんですけど、中山さんと言えば、私たちの世代は『ひょっこりひょうたん島』(1964-69年放送のNHK人形劇)です」と、チエと並んで中山の声優仕事の代表作である同作の「博士」役に言及。「ひょうたん島の時はおいくつでした?」と田中が聞くと、中山は「高校1年でした」と即答。放送開始の64年4月当時は15歳で、子役から、女優、歌手、テレビ司会者などマルチに活躍する70年代に向けての出発点的な時期だった。

 中山は「『ひょうたん島』の話がきた時には『声優なんかやらない』と、ずいぶん断ったんだけど、『どうしても』と言われてやったら、声優さんたちの技術の素晴らしいことを知った。私の頃はマイクが1本しかなかったです」と振り返ると、田中が「入れ代わり立ち代わり、前の人が終わったら、迷惑にならないように、上手に(次の出番の人がマイクの前に)入るんですよね」と補足。中山は「熊倉一雄さんら大先輩を見ていると、面白いくらいに、マイクの前で、声だけでいろんなことを表現していた。それがとっても上手なの。だから、こちら(田中)も、さぞやすごいだろうなって思いますよ」と言葉をつないだ。

 そこで、田中が録音現場の〝今と昔〟の違いについて「コロナ禍もあって、今は(アニメの)『絵』と『自分』しかないんですよ。相手役が(眼前に)いないので、立ちっぱなしで、マイクも消毒しないと使えないので、1回消毒してから、『はい、次の〝患者さん〟』という感じです」と解説した。

 中山は「私たちの頃はすごく楽しかったですよ」と仲間と現場で顔を合わせる中での〝発見〟について触れ、「例えば、『小林恭治さん(※ひょっこりひょうたん島のマシンガン・ダンディ役)って、いい声だね』と、うちの母とも言っていて、大きい人かと思って、実際にお会いしたら小柄な方だった。そんなイメージの違いを感じられる場でもあった」と明かした。

 キャラクターと声優本人の〝イメージの違い〟は確かにある。だが、声を発した瞬間、両者は一体化する。田中はこの日の舞台で自身の持ち役の声色を披露すると会場が大きく沸いた。

 2人のトーク後、オオタと田中がそれぞれの「ひとりコント名作集」や両者による「ふたりコント」を披露。後半の音楽ライブでは、オオタが自作の「ストーカーと呼ばないで」などをギターで弾き語り、田中は「老いることは悲しいことじゃないわ」という歌詞で始まる出演舞台の劇中歌「皺皺(しわしわ)に輝け!」を熱唱した。

 中山は終演後、よろず~ニュースの取材に「田中さんは立派なお声をしていらっしゃる。歌もお上手で、久々に〝舞台人〟の声を聞きました」と称賛し、「私の時代は(マイクを複数の声優が)囲んでやることが楽しかったんですけど、今はそれがなくなったということで、時代は変わりましたね」と実感を込めた。田中は「伊東のスタッフの皆様、そして、中山千夏さんに温かく迎えていただき、ただただ楽しい時間でした!お客様にも楽しんでいただけたならこの上ない幸せです。ありがとうございました!」と感謝した。

 2人の共演を実現したオオタは「千夏さんから『伊東の人たちに生のステージの楽しさを味わってもらいたい。そして客席を満員にしたい』というリクエストをいただき、実現に向けて奔走いたしました。地元のお客様は初めて見るという方も多く、『また来たい』という感想をたくさんいただききました。次につながる舞台でした」と手応えを示していた。

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