【漫画】「裁判員は男性ばかりでいいの?」性犯罪を扱う裁判員制度 論争は男女問題に発展 作者語る

橋本 未来 橋本 未来

 ある日、裁判員制度の候補者に選ばれた漫画家のなかもとゆうりさん。ドキドキと不安を抱えながら裁判所にたどり着くと、初めて「強制性交等致傷」を扱う裁判だと明かされる。結局、裁判員には選ばれなかったなかもとさんだったが……女性が被害者である事件にも関わらず、裁判員に選出されたのが男性ばかりであることや、検察1名を除く、弁護士や裁判官が男性であったことに、とてつもない違和感を覚えることに──SNSで2万回近くのリツイートを記録した作品『裁判員候補者になった話』

 電子マンガ誌『黒蜜』(白泉社)にて連載する「ビターダイヤモンド」など、数々の作品を手掛けている女性漫画家のなかもとゆうりさん(@yr_nkmt2080)。商業誌作品とは全く作風が異なる、エッセイ作品を数多く投稿しているなかもとさんが、23年11月に投稿した『裁判員候補者になった話』が大きな注目を集めた。

 女性が被害者の事件にも関わらず、裁判に関わる検察官1名を除くすべてが男性であった制度上の問題を定義したこの作品には100件をこえるコメントが殺到した。今回は、この作品を描いたなかもとさんにインタビューを敢行し、創作の背景について話を聞いた。

制度上の話題から男女平等論争に

 エックス(旧Twitter)で大きな反響を得た本作は、世の中に対する問題定義や制度上の問題点を告白する目的ではなかったというなかもとさん。

 「(今回の作品に限らず)実は、元々全くSNS用に漫画を描いたことはなく、今回の体験も最初は発表するつもりはありませんでした。自分と身の回りの人に読んでもらうためだけに描いたのが裁判員の漫画です」

 思いがけず多くの人の関心を集めた本作について、作者自身としてはどのように分析しているのか。

  「投稿直後は、私が感じたような『裁判員の不選任制度』と『制度の穴』というか、制度運用しても出てしまう人選の偏りに対する驚きの感想が多かったです。時間が経つにつれて、今回の事件がたまたま強制性交罪だったので、『男が〜』『女が〜』と主語が大きい主張が目立つようになりました。本格的にバズり始めたのもその辺りからではないでしょうか」

 本作に寄せられたコメントを読むと、「確かに違和感がある」「男女比が半々になるような運用を」という肯定的なものから、「裁判における公平性は保たれている」「作者が、フェミなだけでしょ?」など否定派も一定数、見られた。なかもとさんが言うように、本人とは意図しないところが盛り上がった部分も多いようだ。

 今回の反響を受け、今後の活動については、「今回の投稿でフォローしてくださる方が増えたこともあり、今後も折に触れて自分の忘れられない体験や友達と話すような些細な思い出をSNSで発信してみようと思いました」と語る、なかもとさん。そして、今後の展望としては、「商業の漫画の方でもいつも重たいテーマの話ばかり考えているので、 今度は面白かったことや楽しかったことも漫画にしてみたいです」と語ってくれた。いずれにしても、また人々を惹きつける作品を描いてくれることだろう。今後にも期待したい。

<なかもとゆうりさんInformation>
 ■エックス(旧Twitter)
https://x.gd/H4CJ2
 
■現在連載中の作品『ビターダイヤモンド』


https://x.gd/A15ZP

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