2020年に直腸がんと診断されていたことを公表した女優の立花理佐(52)は、11月下旬と12月上旬にブログを更新し、回復に向かっている様子を綴った。80年代に一世を風靡した元アイドルはこれまでに、腸、子宮、卵巣、膣の摘出手術を受けたことなども明かし、病と向き合っている。たにみつ内科(兵庫県伊丹市)の谷光利昭院長は、直腸がんの怖さと治療について解説した。
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直腸は肛門から約15~20㎝までの管腔臓器です。その部分にできた癌(がん)を直腸癌と言います。肛門から近い部分にできると人工肛門になることがありますが、最近では手術が発達してきており、以前のように人工肛門になる確率は低下傾向にあります。
直腸周囲には、男性だと膀胱、精嚢(精液を貯留する臓器)、前立腺があります。女性だと、膣、子宮、卵巣、膣と子宮の前に膀胱があります。癌は直接周囲に広がっていったり、リンパ節に転移したり、血液に乗って離れた臓器(大腸癌では肝臓、肺転移が多いです。)に転移したりします。
女性であれば直腸の前に膣、子宮がありますので、そこに直接浸潤する形で広がっていくと、それらの臓器も一緒に切除しなければなりません。癌の手術は、腫瘍をとるだけではなく、周囲のリンパ節も予防的に切除するのが標準治療になります。
もし、手術中に転移しているリンパ節が多臓器(膣、子宮、卵巣、膀胱、精嚢など)に浸潤していればそれらの臓器も切除しなければなりません。最近はかなり進行している癌については、術前に抗がん剤、放射線治療を施し、腫瘍を小さくしてから、できる限り切除範囲を小さくする工夫がされています。
私が医師になった頃には、抗がん剤治療、放射線治療もそれほど確立されていませんでした。ですから、広範囲に浸潤した進行直腸癌に対しては、骨盤内蔵全摘という手術行われるケースもありました。
男性であれば、直腸、膀胱、精嚢、前立腺を切除し、人工肛門、人工膀胱を作製します。女性であれば、直腸、膣、子宮、卵巣、膀胱を切除し、人工肛門、人工膀胱を作製します。しかし、最近はこのような大手術を見聞きすることは、ほとんどありません。これは治療法の改善と検診等による早期発見が寄与しているのものと思われます。
いずれにしても、早期発見することは重要です。また、以前では治療が不可能であった癌も治癒しているケースがたくさんあります。進行癌であっても希望をもって治療に望んで頂きたいと思います。