9月2日、大阪市中央公会堂で開催された「パラスポーツの日」記念イベント。
アダプテッドスポーツサポートセンター(ASSC)ファウンダーであり、シドニーパラリンピック車椅子バスケットボール全日本総監督の髙橋明さんの言葉が印象に残った。
「車椅子やバギーの方のほどんどが時差出勤されているのをご存知ですか?私はそれを知ってすぐにOsaka Metroに車椅子専用車両はないのか?ドアとドア1枚分のスペースでもいいので作って欲しいと問い合わせました。担当者の説明で女性専用車両の下に黒文字で『小学校6年生以下のお子さま、身体の不自由なお客さまとその介護者の方等をはじめ、男性のお客さまもご乗車されることがあります』と記載があると返答がありこの時私も初めてその文字の存在を知りました」
訪問介護従事者の経験がある筆者も、女性専用車両が障害者や介護者のためにも設けられているということは知らなかった。
帰り道、Osaka Metro御堂筋線で女性専用車両のホームを確認すると、小さめの文字ではあるが確かに
「小学校6年生以下のお子さま、身体の不自由なお客さまとその介護者の方等、男性のお客さまがご乗車されていることがありますが、ご理解をお願いします」
と書かれていた。
いつから表記されたのかOsaka Metroに確認すると
「御堂筋線のホーム床は御堂筋線において女性専用車両の時間帯を拡大し平日の終日実施とした2004年(平成 16 年) 9月6日から表記しております」
と回答があった。女性専用車両を設けている鉄道各社では同様の取り組み、運用をしていることが多いようだ。
しかし、現状からするとその配慮はほとんど周知されておらず、なにより「女性専用」と書かれたの文字のインパクトが強すぎて、男性が堂々と乗ってきたらびっくりするだろうし、男性側も気まずいだろう。障害を持つ知人たちに「身体障害者が優先して乗れる車両がある事は知っているか?また利用しようと思うか?」と尋ねたところ、男性の場合、女性専用車両が利用可能でも乗りたくないとのこと。ネット上でも女性専用車両に乗った障害者や介護者が他の乗客から非難を受けたという情報があった。
このことに関して改めて、ASSCファウンダーの髙橋さんと理事の尾崎幸一さんにお話を聞いた。
髙橋「女性専用車両の問題については障害がある人もほとんど知らないと思います。共生の社会、多様性の社会は大切です。しかし女性専用車両には本来別の、女性を嫌がらせや痴漢などから守る目的があります。Osaka Metroに聞いたら『女性専用車両の下を読んでください』と言われましたが、確かに案内は書いているけどマイクで放送しているわけでもないし、男性は女性専用車両に乗ることには抵抗がありますよね。ケータイの時は優先座席では電源をお切りくださいと放送はあるけど、若者だとほとんどそれがなぜかわかっていない。電磁波が心臓ペースメーカーに悪影響があることは学校で習うわけでもないですからね」
尾崎「まだ都会だとこういう取り組みがあるけど、地方だとそうもいかない。物理的なことも大切だけどあちらを立てるとこちらが立たない。人が人に声をかけたりお互いが気遣ってあげることで補えることも多くあると思います」
髙橋「話は少し変わるけど、10月1日に名古屋市でエスカレーター条例ができ、エスカレーターには止まって乗ることが決まりました。関西、関東では左右どちらかに分かれて乗る文化があるけど、左側からエスカレーターに乗れない人もいるんです。左側の脳梗塞になると右上下肢が麻痺するので左から乗れません。逆に、右の脳梗塞になると左上下肢が麻痺するので右側から乗れません。歩ける人はできれば階段を使ってほしいです」
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「均一化されたミックスジュースのような世界ではなく、個々がしっかりと個性を発揮できるフルーツポンチのような世界になってほしい」と髙橋さん。
障害者の人口は2020年の調べで964.7万人(精神障害含む)。13人に1人は障害者ということだ。今一度それぞれができることを考え、行動に移すことで多様性が尊重される社会を築きたいものだ。
髙橋明さん
特定非営利活動法人アダプテッドスポーツ・サポートセンターファウンダーhttps://www.assc.or.jp
シドニーパラリンピック車椅子バスケットボール全日本総監督、大阪体育大学客員教授
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尾崎幸一さん
特定非営利活動法人アダプテッドスポーツ・サポートセンター理事、(株)クルーズ代表取締役、(一社)io-コミュニティ理事