怪獣や宇宙人、UMA(未確認動物)の精巧なコスチュームを身にまとったレスラーたちが戦うエンターテインメント系プロレス団体「怪獣プロレス」が28日夜、都内のイベント会場・パームス秋葉原で旗揚げ戦を行った。昭和プロレス史に大きな足跡を残したタイガー・ジェット・シンからメッセージが届き、特撮ドラマで主役を張ったレジェンド俳優たちも登場する中、5試合中、最も弱い印象を与えた「甲府星人」がマニア心をくすぐった。会場の様子をリポートする。(文中敬称略)
「甲府星人」とは何か。
怪獣プロレスの社長レスラー・矢口壹琅(雷神矢口)は、よろず~ニュースの取材に対して、「(1975年に)『甲府事件』と呼ばれる出来事がありました。山梨県の甲府市に円盤(未確認飛行物体)が降りてきて、乗っていた宇宙人らしき者と地元の人たちが遭遇したという事件です。たくさんの子どもや畑仕事をしていた大人たちも見ていたということで、当時、新聞でも報じられました。なぜか、他県での目撃情報がなかったのですが、甲府での集団的な証言は同じ姿形で一致し、子どもたちが描いた絵から『甲府星人』というキャラクターが生まれたのです。怪獣プロレスでは、そのキャラを再現しました」と説明した。
プロレスデビューした甲府星人は第2試合に登場。全身タイツ状のコスチュームは胴体から足が銀色で、両側にバイキングのような角がある頭部と両手は金色。75年に地元の子どもたちが描いた絵から造形されたビジュアルだ。
怪獣プロレス取締役でUMA研究家の山口敏太郎は「山梨県で子どもたちが目撃してから50周年を迎えた宇宙人。大先輩ですよ。ハイテクを使う、かなりの知性派と聞いている」と解説。対する、宇宙怪獣キングマンドラは赤い突起物の先にある目玉を3つ揺らしているのだが、既視感がある。大阪・関西万博の公式キャラクター(愛称「ミャクミャク」)を連想させた。山口も解説席で「関西地方で見たことがある」と付け加えた。
ゴングが鳴ると、甲府星人は「ヒーッ!!ヒッヒーッ!」と奇声を発して立ち向かうも、終始圧倒されて防戦一方。山口から「あまり知性は感じませんね」と突っ込まれながらも奮闘したが、7分58秒、相手のボディプレスで失神TKO負けとなった。見せ場こそほとんどなかったが、48年前の甲府市に由来する都市伝説があることを観客に認識させたという意義はあった。同じく都市伝説系のキャラクターとして、山口は「人面犬も参戦を希望している」と、89~90年頃に話題になった存在が登場する可能性も示唆した。
このように、通常のプロレス興行にはない要素が特徴だが、一方で昭和の伝説を作った人物たちが結集する場でもある。
矢口と、同団体取締役で審判部長を務めるミスター高橋(元新日本フロレス審判部長)と親交のあるT・J・シンは「ピーター高橋、矢口、夢いっぱいの新パフォーマンスで観客を魅了してくれ!カナダから最大限のエールを送る」などと門出を祝福した。
また、仮面ライダー2号「一文字隼人」を演じた俳優・佐々木剛は、矢口に刺客を送る「地獄博士」というキャラクターで会場モニターに登場して宣戦布告。「超人バロム・1」の主演俳優・高野浩幸は広島発の類人猿系UMA「ヒバゴン」の息子という設定の「ヒバゴン・ジュニア」のマネジャーとして、チェーンと木刀を手にした迷彩服とアイパッチ姿で「バロム爆弾パンチで行け!」などと指示を繰り出し、さらにはバロム・クロスでパワーを注入し、矢口撃破をアシストした。その矢口登場前には、スプーン曲げなどの念力で知られる超能力者「エスパー清田」としてメディアで活躍した清田益章による舞踏が披露された。
矢口は「一生は1回。だったら、好きなことをやって命を燃やしたっていいじゃないか!いい大人が馬鹿やったっていいじゃないか!」とリングで絶叫。高野は当サイトに「今後も矢口さんとスクラムを組んで怪獣プロレスをやっていきたい。俳優としても、リングの上で演じられるということは一つの糧というか経験になるわけですから、ありがたいです」と語った。
第2弾興行は11月4日に「東京ドームシティ プリズムホール」で、矢口のデビュー30周年記念大会も兼ねて開催される。