1951年に大阪で誕生した「パインアメ」。缶詰のパイナップルをイメージし、真ん中に穴がある黄色で丸い形状、味もそっくりと、長年、多くの人に親しまれている。ただ、第1号は現在のような穴があいた形ではなかった。
パイン株式会社(大阪市)の担当者によると、誕生のきっかけは初代社長が戦後間もない頃の当時、ものすごく高級品でみんなの憧れだったパイナップルの缶詰の味を、もっと手軽に味わうことができないかと考案した。
原材料の砂糖などが貴重な当時は闇市などで買い集めた。パイナップルの香料は存在しなかったようで、ミックスしてパイナップルに近いものを自作した。
完成した第1号の商品は、現在のように真ん中に穴があいておらず、丸めたアメを平たくつぶし、パイナップルの模様をつけたもの。まだ穴を開ける機械は日本になかったが、初代社長のパイナップルの缶詰に対する思い入れは強く、手作業で社員らが割り箸で1個ずつ穴を開けるようになった。担当者が「すごく大変だったと思います。私もたまに(パインアメを)溶かしたもので形作ろうとしましたけど、(穴を)開けるタイミングが難しくて、うまくいきませんでした」と話すほどの技術が必要。腱鞘炎になる社員が続出したという。
ようやく2年後の1953年に自動穴開け機が完成し、現在の原型となった。その後は砂糖、水あめをベースにその時々に合わせて厳選したパイナップルの果汁、香料を使用して製作している。
最近はSNSがきっかけで70年ぶりに復刻したパインアメ缶を、大阪市内の百貨店でのイベントで限定販売すると即完売の人気ぶり。フリマサイトでは高額で転売されたものもあった。あまりの熱狂ぶりは予想をはるかに超えるものだった。
今後については「すごい大きな目標はなくて、ずっとみなさんのそばにあるお菓子でありたいなと思います。今のおいしさを守り続けながら、その時代に合わせながら、みなさんに大事にしてもらえたらいいなと」と担当者。70年のロングセラーはいつまでも、時代と人に寄り添って愛され続けていく。