アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」驚くべき各年代に存在する作品群、ヒロインの推移から第6期までを考える

沼田 浩一 沼田 浩一
映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」ティザービジュアル (C)映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」製作委員会
映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」ティザービジュアル (C)映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」製作委員会

 「ゲゲゲの鬼太郎」の最新劇場映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」の公開が11月17日に予定されています。すでに発表されているビジュアルはヒヤッとするほど不気味なもので、キャッチコピーは「原点にして最恐―」。第6期(2018~2020年)の劇場版ですが、内容は鬼太郎の誕生にまつわる物語のようで、これまでの悪い妖怪を退治するヒーロー然とした鬼太郎ではなさそうです。今月6日には本編の一部を含んだ特報映像が公開されました。ダークで怪奇色が強い「誕生編」がどのように描かれるのか非常に楽しみです。

 ■各年代に存在するゲゲゲの鬼太郎

 さて、アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」ですが、みなさんが親しんだのはどのシリーズでしょうか?最初のアニメ化は1968~1969年に放映されたいわゆる第1期です。この頃はまだモノクロでした。続いて1971~1972年の第2期、1985~1988年の第3期、1996~1998年の第4期、2007~2009年の第5期、2018~2020年の第6期と続きます。驚くべきことに60年代から2020年代までの各年代にそれぞれの鬼太郎がいるんですね。そんな大人気作ですから、それぞれに「自分の好きな鬼太郎」がいるかと思います。そして、今回はそれぞれの「ゲゲゲの鬼太郎」から、ヒロインの存在について考えてみたいと思います。

  40代後半である筆者がヒロインとして、最初に思い浮かべるのは天童ユメコです。第3期の登場キャラクターで、リアルタイムで見ていました。それまでにも第2期の再放送は何度も見ており、怪獣や妖怪が大好きだった幼少期ですから、すっかり夢中になったことを覚えています。ちなみに第1期もおぼろげながら見ていた記憶があります。ただしこちらはモノクロ映像が子供心に怖くてしっかりとは見ていません。第2期を見て、すっかり「ゲゲゲの鬼太郎」にハマった筆者としては、第3期が始まるというニュースは大事件でした。待望の新作なのです。

 そして待ちに待った放送1回目。主題歌はおなじみ「ゲッゲッゲゲゲのゲェ~朝は寝床でグーグーグー…」の「ゲゲゲの鬼太郎」。歌うのは吉幾三で思わずズッコケました。当時「俺ら東京さ行ぐだ」しか知らなかったので、「なぜ吉幾三が?」と思ったものです。と、そんなことはともかく、主題歌が吉幾三であること以上に違和感を受けたのは「謎の少女」の存在です。オープニングに登場する、どう見ても普通の女の子。しかも第1話には登場しません。「誰だったんだ、あの子は?」と思ったその子は、第2話から登場する天童ユメコでした。

 原作には登場しない第3期のみのオリジナルキャラクターで、いわばヒロインの役割を果たしていました。そういえば、「ゲゲゲの鬼太郎」には明確なヒロインがいませんでした。鬼太郎ファミリーには猫娘がいますが、第1期ではわずか1回のみの登場であり、第2期ではレギュラー化するものの、ヒロインと呼べるほどチヤホヤされている感じでもありません。ヒロインまであと一歩というところでしょうか。そして、第3期になって猫娘を差し置いて、登場したのがユメコちゃんとなります。

 今となってはよくわかるのですが、鬼太郎たちとユメコちゃんの交流は、妖怪と人間との意見の相違や共存などを理解しやすくするための仕組みだったわけです。しかし、そんな小難しいことを理解できない当時の筆者は、ユメコちゃんという普通の人間が妖怪たちと安易に仲良くしている様子に嫉妬を交えた複雑な気持ちを持っていました。同じような印象を持った人は同世代にもいると思っているのですが、いかがでしょう?

 ともかく、天童ユメコによって「鬼太郎ワールド」にヒロインという存在が現れたことになります。

■再び曖昧になるヒロイン

 ところが、第4期ではふたたびヒロインの存在が曖昧になります。一応、村上祐子という小学生の女の子が準レギュラーのような形で第1話から登場しますが、徐々に登場回数が減って、残念ながらレギュラーとは呼べなくなります。逆に猫娘はこれまでのシリーズ以上に出番や見せ場が増えており、猫娘のヒロインとしての重要度が増してきているといった感じです。そもそも小学生でヒロインというのが、「ゲゲゲの鬼太郎」の世界観にそぐわなくなったとも感じられました。ただし、猫娘のデザインはそれまでよりも可愛くなっているものの、まだ原作のイメージに近く、美少女といった雰囲気は出ていません。

 そして第5期で猫娘は大化けします。キャラクターデザインが原作から大きく離れて現代的な美少女キャラに変貌を遂げます。これはもう完璧なヒロインと断言していいでしょう。それを裏付けるようについに全話登場の快挙です。ところが、第5期にもうひとり、人間側のヒロインが1作品にのみですが登場します。それが劇場版「ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂‼」(2008年)の風祭華です。風祭華は中学生で、「完璧な美人」と呼ばれるほど、物語の中心人物でもあります。同作では風祭華にヒロインの座を奪われた感じのある猫娘ですが、決して負けてはいません。上映している地域別にその場所にちなんだコスプレに扮するというサービスシーンがあり、ヒロインの座を堅守していました。

 このまま猫娘がヒロインの座をキープするかと思われましたが、第6期では人間側のヒロインとして犬山まながレギュラー登場します。犬山まなは第6期のために生み出されたオリジナルキャラで、初登場となる第1話から鬼太郎ファミリーと深く関わります。一方で猫娘の方は8頭身ほどに身長がのび、美少女から美人、大人っぽいデザインへ変更されました。戦闘能力もこれまでの猫娘とは比較ならないくらい強く、犬山まなと比べて、見た目も立ち位置も被らないように設定されています。悪い妖怪に狙われる人間側のヒロインとして犬山まな、鬼太郎ファミリーとして強いカッコいいお姉さんポジションとしての猫娘は、ふたつのタイプのヒロインを見事に作品内に同居させることができたのではないでしょうか。第6期はダブルヒロインと言っていいでしょう。

 そもそも水木しげるは女性キャラを描くのを苦手としていました。原作に登場する女の子もそのほとんどがアシスタントによる作画と言われてます。そんな水木しげるですから、作中にヒロインという発想はあまりなかったと思われます。第6期にわたるシリーズにおいて、ヒロインの設定や役割はそれぞれに違ったものでした。原作に存在しないだけに、アニメスタッフもあれこれと考え抜いてきた結果だと思われます。

 そして、新作「鬼太郎誕生 ゲゲゲの誕生」です。ヒロインと呼べるキャラクターは登場するのでしょうか?個人的には第6期の大人びた猫娘が大好きなので、鬼太郎との初めての出会い、みたいなエピソードがあれば嬉しいところです。

 「ゲゲゲの鬼太郎」に登場するヒロインについて、筆者の思い出と思い入れを交えて、あれこれと述べてみましたが、ここへ来て、最重要の女性キャラクターを忘れていたことに気づきました。水木しげるの原作から頻繁に登場し、第1期から第6期までレギュラー出演を続ける砂かけ婆です。実は砂かけ婆こそが真のヒロインかも知れませんね。

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