初夏は蚕の季節です。今年は5月22日が七十二候(気候や動植物の変化で季節を知らせる暦)の「蚕起食桑」(かいこおきてくわをはむ)でした。
筆者も今、繭になった蚕の羽化を待っているところです。蚕は大体4齢幼虫からの販売になるので幼虫で2週間、蛹で2週間、成虫で1週間と最大でも5週間しか一緒にいられませんが、景気のいい食べっぷりとみるみる膨らむ成長の速さに、気が付いたら蚕を見てしまうくらい楽しい時間をくれます。成虫の蚕もつぶらな瞳とウサギの耳のような大きな触覚、純白の体が可愛らしく、虫が苦手な人にこそ見てほしい昆虫です。ちなみにあまり面白くないと思われる蛹(繭)の時期も実は結構ブルブルと動きます。
蚕を飼い損ねてしまったと思った人も安心してください。
6月半ばから7月にかけては夏蚕の季節。それを逃しても7月半ばから8月にかけての初秋蚕。そして、8月半ばから9月にかけての晩秋蚕が楽しめます。
特に7月に入ると子供の自由研究用として少し値引きされた飼育キットが販売されたりします。
蚕の餌といえば、桑の葉です。
蚕を飼育していると、「今は桑の葉が少ないから大変でしょう」と言われることがあります。養蚕農家の減少とともに数を減らした桑畑は2013年には地図記号からも姿を消しました。しかし、近年は抹茶羊羹のような人工飼料が販売されています。排気ガスや農薬による汚染の心配もないのでグッと簡単に養蚕体験ができるでしょう。でも、一度でも桑の葉を与えてしまうと人工飼料を食べなくなってしまうそうなので注意が必要です。その時は諦めて新鮮な桑の葉を毎日たくさん用意する心構えを。桑の葉で蚕を育てるのも、ショワショワと桑を食む音が聞こえて良いものです。大量に蚕を飼育しているとまるで雨のようにこの音が聞こえてきます。これを「蚕時雨」と呼びます。
かつて蚕は牛や馬のような身近な動物であったため、様々な和歌や俳句に詠まれたり、言葉に名前が残ったりしてきました。
「蚕豆」を食べたことがある人も多いと思います。そんな記憶はありませんか?実はこれ、この時期に美味しい「そらまめ」のことです。蚕の繭に豆のさやが似ていることから付けられたとする説や養蚕が盛んな時期に美味しくなることから付けられた説があります。養蚕はちょっとと思う方はそらまめ片手に少しだけ蚕を感じてみてください。