「ビッグマック指数」で分かる日本の購買力低下!450円に値上がりも、スイス943円、米英豪600円台 識者語る

北村 泰介 北村 泰介
日本でも半世紀以上に渡って親しまれてきた「マクドナルド」の人気商品「ビッグマック」。その価格によって各国の購買力が数値化されるという
日本でも半世紀以上に渡って親しまれてきた「マクドナルド」の人気商品「ビッグマック」。その価格によって各国の購買力が数値化されるという

 ファストフードチェーン「マクドナルド」で販売されている人気商品「ビッグマック」が、各国の経済力を示す「指数」になるという説がある。流通アナリストで、フジテレビ「Live News α」のコメンテーターを務める渡辺広明氏が、よろず~ニュースの取材に対し、この「ビッグマック指数」について解説した。

 マクドナルドの日本第1号店が都内に誕生した1971年当時は200円だったビッグマック。昭和末期から平成初期のバブル期ではその前夜期も含めて400円前後を推移したが、95年に280円に値下がりし、2000年代も200円台をキープ。かつての「ちょっとぜいたく」な〝ご褒美〟メニューもみじかに感じたものだった。

 ところが、2010年代になると300円台後半(15年は370円、18年は390円など)となり、20年代には400円台に突入。昨年9月に410円、4か月後の今年1月には450円に値上がりした(いずれも単品価格)。

 それでも、世界の中で日本のビッグマックは高くない方だという。スイスは943円と日本の倍以上で、米国は695円、ユーロ圏は685円、オーストラリアは668円、英国は609円と続く。東アジア圏でも日本は韓国(518円)よりも安い(いずれも小数点以下切り捨て、為替は今年1月時点)。

 こうした世界各国でのビッグマックの価格を比較して、その国の貨幣価値をはかるというのが、英国の経済誌「エコノミスト」が毎年発表している「ビッグマック指数」だ。その指数が高いほど、国際間の購買力が高いと評される。

 渡辺氏は「日本では450 円で買えるビックマックがスイスに行くと943円も払わなくてはいけない。でも、現地の人にとっては『適切なビッグマックの価格』ですから、高いとは感じない。その点において『日本は先進国のはずなのに、新興国のような価格』ということになります」と解説した。

 渡辺氏は今年出版された経済アナリスト・馬渕磨理子氏との共著「ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた」(フォレスト出版)で「ビッグマック指数」を取り上げ、「ニッポン経済の問題」を消費者目線で説いている。

 渡辺氏は「ビッグマックはどの国でもほとんど同じ品質でつくられているため、各国での価格を比較すれば、それぞれの購買力が見えてくるというわけです。つまり、ビッグマック指数とは『購買力が見える指数』です」と改めて説明。その上で、同氏は「『その国のビッグマックの販売価格÷米国の販売価格』がビックマック指数になります。投資家は、この数値によって当該の通貨が米ドルに対し、どれほどの評価を保っているかを確認するのです」と付け加えた。

 そこで、日本の場合を計算してみた。日本のビッグマックが450円、米国は約5ドル(※今年1月末時点で5・36ドル)とすれば、450÷5=90、つまり1ドル=約90円がビックマック指数となる。だが、実際の為替レートは1ドル134円(4月25日時点)なので、為替相場はビックマック指数に比べてかなり円安であることが分かる。

 昨年来、日本では円安やエネルギー価格上昇の影響を受けて、多くの種類の商品が値上がりしている。90年代半ばからゼロ年代にかけ、ビッグマックは200円台という破格の安さをキープしていたが、その背景にはデフレがあった。馬渕氏は同書の中で「長引く不況によって平均賃金がなかなか上がらなかったから、価格を上げられずにデフレが続いていた」と解説している。

 渡辺氏は「国力と価格が見合わないままだったのが平成だった。今、物価が高くなったのではなく、適切な価格に上がろうとしているのです」と指摘。同氏は「家計を圧迫されている人たちは、国の補助や給付を余すことなく利用しながら耐えて、余裕のある人たちはその分を消費して経済を回さなくてはいけない」と呼びかけた。

 では、日本は世界に比べると「貧困」ということになるのだろうか。

 渡辺氏は「各国間でビッグマックの仕様に多少なりとも違いがあることや、人件費など生産コストなどの差異が考慮されないことから、ビッグマック指数は厳密な数値としては精査する必要があり、結果はあくまでも参考として受け止めるのがよさそうです」と補足した。

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