兵庫県明石市のご当地グルメとして、すっかり定着した「明石焼」。明石観光協会によると、卵の白身を接着剤として使用される明石玉(模造珊瑚)を作る過程で、余った卵の黄身と小麦粉、さらには目の前で獲れるタコを入れて作られたものが、明石焼(玉子焼)のはじまりだそう。食品ロスをなくす「もったいない精神」は、現在のSDGs(持続可能な開発目標)に通じるものがあるだろう。
大正時代に樽屋町で屋台を引いた向井清太郎氏が商売の元祖と言われている。1985年頃には明石市の職員が地元で食されている「玉子焼」をもっとPRしようと、明石にちなんだ名前「明石焼」と呼び始め、イベントやパンフレットで紹介するようになったことがきっかけで、知名度もアップ。明石観光協会担当者は「それまでは地元の方たちは特別な食べ物ではないという認識だったと思います」と話した。
徐々に専門店が増え始め、現在は向井清太郎氏のレシピを受け継ぐ「明石焼よこ井」、大正13年創業の老舗「本家きむらや」など、市内に約70店舗。ご当地グルメを目当てに、遠方から多くの観光客が訪れるようになった。明石玉は事業者が存在しておらず生産もされていないこともあり、黄身だけでなく白身も「明石焼」に使用されている。
昨年、明石焼(玉子焼)は文化庁から「100年フード」に認定された。我が国の多様な食文化の継承・振興への機運を醸成するため、地域で世代を超えて受け継がれてきた食文化を、100年続く食文化「100年フード」と名付け、文化庁とともに継承していくことを目指す取り組みだ。
明石観光協会担当者も「今後100年、そしてその先も明石の郷土料理として継承されていくことを願っています。また、未来に明石焼(玉子焼)を継承するために、日本の無形文化遺産の可能性も探っていきたいと考えております」と今後の目標を掲げた。