関西の伝説的飲料「ネーポン」が、NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(総合、前8・00ほか)の視聴者の間で話題になっている。主人公・るいが働くクリーニング店の近くに貼られたオレンジ色と水色のポスターから、昭和から平成時代に関西で愛された「ネーポン」を思い出す人が続出。”朝ドラ効果”で売り上げが伸びているという。
昨年末から放送が始まった2代目ヒロイン編では、深津絵里が演じる主人公るいが昭和30年代の大阪で生活する。るいが働くクリーニング店向かいの壁にはオレンジ色と水色の絵柄に「メーポン」の文字が入ったポスターが貼られ、背景として映り込んだ。放送後はツイッター上で「メーポン」の”元ネタ”は「ネーポン」ではないか、と考察する声が上がった。
「ネーポン」は1960年代前半に「ツルヤ食料品研究所」(兵庫県神戸市)が発売したかんきつ果汁入り飲料。銭湯や飲食店などで親しまれ、牛乳配達と一緒に家庭へ届けられることもあったという。1990年代にはテレビ番組や中島らもさんの著作で紹介され、全国的に有名になった。「ツルヤ―」は2007年に廃業。高齢の店主から商標権を譲り受けたネーポン田中氏(43)が、2019年に「ネーポンシロップ」として復刻販売を始めた。
田中氏が元ツルヤ―店主の「おばちゃん」に聞いた話よると、ポスターは「ネーポン」発売とほぼ同時期に制作されたといい、創業者がオレンジと青の配色を好んでいたという。田中氏は「ツルヤのおばちゃんから(似ているポスターが)『朝ドラに出ているらしいで』と連絡があって、僕も確認した」と、元店主からの連絡で朝ドラのポスターを知った。ドラマの舞台となっている1960年代について「『東京オリンピック(1964年)の前後に爆発的に売れた』と言っていました」 と「おばちゃん」の思い出を紹介した。
”朝ドラ効果”について「ネーポンシロップ」を販売する公式販売サイト「pontab web shop」を運営する楠瀬航氏と立花亜希子氏は「ツイッターで『実在しているんですか』と注文していただいだりとか。今月は急速に在庫が減っています」とよろこんだ。「ツルヤ―」の廃業時に譲り受けた貴重なポスターの実物を購入者に配るキャンペーンも行っている。
田中氏は90年代のテレビ番組がきっかけで「ネーポン」に携わり始めた。「レトロなだけではなく、冒険的で怪しいところに惹かれた。単に『復活』というよりも、サブカルの文化面でつながっていくのが楽しい」。
”伝説的飲み物”として話題になることで、コレクターやマニアの関心も集める。もう一つの公式販売サイト「ひめよし商店」の村上吉晴氏は「分からないけど飲んでみようという人が大半です。(購入者には)『なんで知っているんだろう』という若い年代の方がいます」と話した。
「―シロップ」は、懐かしい味を残しながら「飲みやすく」改良した4倍濃縮液の商品。通信販売のほか、大阪・新世界の喫茶店「タマイチ」や、なんば、日本橋、兵庫県や岐阜県の飲食店などでも提供されている。今月にはポスター柄のNFTアートを発売。ネーポンは進化を続けている。