円安が進行するとともに、日本では米国の物価に関する話題がよく触れられるようになっている。ニューヨークではラーメンが1杯約3000円、ランチのセットは5000円…あまりの”差”に驚く人も多い。上がらない賃金問題なども含めて、日本の経済的な問題が浮き彫りに、という報道も見られる。一方で米国の人たち、多くの庶民は、消費者物価指数の上昇率9%超というインフレの激しい物価上昇に付いていけているのだろうか。
シカゴに住むシャノンさんは、8月初めて食料配給所を訪れた。米政府が支給するフードスタンプ(食料配給券)で食料を買っていたが、夏に物価が高騰したためそれでは足りなくなった。シャノンさんは、「薬をとるか、食事をとるかの選択を迫られている」と語る。 非営利団体「ナリッシング・ホープ」の今年の訪問者数は4割増。このケースは「まれな話」とは言えないようだ。
食料の値上がりは、フードスタンプの価値を弱めている。農務省によると、フードスタンプの今年平均は、1人当たりひと月230ドル分。子どもがいて食料が不足している家庭は7月までに16%以上増加しており、5家族のうち1家族は食料が足りていないという調査結果もある。
「飢え」自体は最近では改善傾向にあり、21年には新型コロナの救済措置もあって、状況は好転していた。だが、コロナ対策が一段落するとそうはいかないようだ。農務省が購入した食料はコロナ禍のピークと比べ約半分となり、フードロスの取り組みが進んだ食料品店などからの寄付も減っている。
ナリッシング・ホープのCEOケリー・オコネルさんによると、「家計が少し安定したと思ったら、インフレが来て食料は(値段が)12%アップ。どうにかして食料を得ないといけない」と苦境を説明し、「初めてここを使う人が6000人以上いた。彼らは家賃を払うか食料を買うか、 医師が出した薬を買うか食料を買うかの二択を迫られている」
決して笑えない厳しい生活状況がにじみ出る。庶民の”飢え”は深刻化を増しているようだ。