「友達のよしみ」で割引を求めるタチの悪い〝自称友人〟に対し、店主が取るべき対応は?「大人研究」のパイオニアにして第一人者、『大人養成講座』『大人力検定』など多くの著書を世に送り出してきたコラムニストの石原壮一郎氏が「大人の切り返し講座~ピンチを救う逆転フレーズ~」と題し、その方法をお伝えする。
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【今回のピンチ】
小さな居酒屋を経営している。友達の友達が、4人で飲み会の予約を入れてくれた。それはありがたいのだが、電話の最後に「友達のよしみでもっと安くしてよ」と…。
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ピンチというか、非常に困惑するシチュエーションです。採算ギリギリのお得な飲み放題コースなので、これ以上は安くはできません。かといって、冷たく「無理です」と返すわけにもいかないし……。
相手が「特別扱い」をしてもらうつもりだったとしたら、その期待に応えないと、きっと腹を立てるでしょう。根に持って、周囲に「あの店はサービスが悪い」と言いふらされるかもしれません。やっぱり十分に「ピンチ」な状況と言えます。
そもそも一般論として、本当に親しい友達は、店を経営している友達にこんなことは言いません。薄い関係の〝友達〟に限って、「友達のよしみ」を強調したがります。
「ウチの『お友達価格』は、通常の1割増しだけど、それでもいいですか?」
本音としては、そう言ってやりたいところです。向こうが「友達のよしみで」と言い出さなかったら、できる範囲でサービスしてあげようとも思ったでしょう。
ここは、明るい口調で「お値段はギリギリで変えられないんですけど、精いっぱいサービスさせていただきます!」と、抽象的な言い方で気合を示しておくのが無難。うっかり嫌そうな口調にならないように、くれぐれも気をつけましょう。
それでも納得せず、「どういうサービス?」と具体的な説明を求めてきたら、「刺盛りのグレードをアップさせていただきます」とでも言っておきます。実物を見ても、何がどうアップしたのかはよくわかりません。
お客の立場として肝に銘じておきたいのは、「友達のよしみで」と言って特別サービスを求めることのタチの悪さというか、みっともなさ。薄い関係の場合はなおさらです。
相手もこっちを友達と思ってくれているなら、こっちから要求しないほうが、結果的にたくさんのサービスを受けられるでしょう。いや、それを期待するわけではありませんけど、具体的なサービス以上に、相手の心遣いをうれしく感じることができます。
このシチュエーションにおけるピンチは、返事に困ることだけではありません。適当にいなしたとしても、あとから「俺、ケチ臭かったかな……」と後ろめたさを覚えるというピンチもあります。
そんな必要は全くありません。本当にケチ臭くて図々しくて失礼なのは、間違いなく相手です。そのことを改めて自分に言いきかせて、こっちのピンチも蹴散らしましょう。