ブレーク前のあいみょんを特集したラジオDJ・Nobby(41)がこのほど、経済本「実は大人も知らないことだらけ 経済がわかれば最強!」(KADOKAWA)を上梓した。2018年に音声プラットフォーム・Voicyで経済キャスター活動を開始し、総再生回数5000万回超の人気番組「きのうの経済を毎朝5分で!」を自ら構成する。昨年に脱サラ。声を生かして〝二足のわらじ〟で活躍する男に話を聞いた。
経済に馴染みが薄い層を対象にした初の著書。基本的な知識から米国、欧州、中国や韓国などのアジア、そして日本を取り巻く最新の世界情勢を分かりやすく解説。今年から高校での投資教育が始まり、経済への関心が高まる中で「これからは勝手に経済が良くなることは考えにくい。お金に働いてもらって、どれだけ豊かになれるか」と、投資の重要性を語った。その上で「世界経済をシーソーゲームのように捉えて、分散させることが大事。この本で経済の全体像をつかんでもらいたい。投資をされている方でも偏りすぎた考えや、近視眼的な見方をされる方が多いので、多くの人に読んでほしい」と呼び掛けた。
Nobbyは関西学院大学を卒業し、2004年にシティバンク・エヌ・エイに入社。外国為替ディーラーやクレジットリスク管理などを担当した。その後、東京金融取引所、プルデンシャル生命保険、メットライフ生命を経て昨年、独立した。
「銀行、証券、保険業界で働き、悪い連中、お客の裏の顔も知ることができたのは僕の財産です。仕事では公平公正が大事だと教わりました。コンプライアンスの仕事にも関わりましたが、偏った情報やウソで損害を与えたら、訴えられますから。ところが書店では、偏った見方の経済本ばかりが売れていて、そこに僕が本を出す意義があるように思いました。これさえやれば万事OK、のようなことはない。この本で考える基準を持ってもらえれば」
タイトルは力強いが、内容は中立的かつ常識的、専門用語の羅列は避けた。会社員時代の実務、Voicyで経済ニュースを連日伝える経験を生かし、分かりやすさを追求した。
Nobbyこと福永信彦は兵庫県神戸市出身。「父親がテレビのチャンネル権を持っていた」と、小学生時からラジオを好んだ。ラジオDJ・橘しんごに憧れる少年時代を経て、報徳学園に進学後は放送部に所属。課外授業で知り合った関係者を通じて自ら売り込み、兵庫県・西宮市のさくらFMが開局した1998年、同局の「高校生本音でTalk!」でラジオDJデビューを果たした。番組は社会人時代まで、10年以上続いた。
勤務地は東京だったが「定期的に帰郷しては、西宮で収録していました。DJの収入はなく、給料から持ち出しでした」と振り返った。2011年からは「DJ Nobby's Tokyo LIVE!!」を担当。未来を担うインディーアーティストを取り上げる番組内容で、2016年2月、あいみょんが登場した。
「インディーズからメジャーデビューして売れるアーティストは、皆がなびかないというか、自分を持っている方が多かったですね。あいみょんさんも自信のなさげな発言をする一方で、言うべきことはハッキリさせる印象を持ちました」
その年の11月に「生きていたんだよな」でメジャーデビューし、またたく間にブレークしたあいみょんを横目に、金融機関で働きながらラジオDJを続けていたNobbyに転機が訪れた。
2017年の末、Voicyで「DJ Nobby's Tokyo LIVE!!」のこぼれ話を配信する番組をスタート。程なくして「朝起きた時に、寝ている間の欧米のできごと、きのうの経済トピックをまとめた音声ニュースチャンネルを聴きたくなったんです。その時になかったので、自分でつくろうと思いました」と、18年2月に「きのうの経済を毎朝5分で!」を開始した。自ら新聞、海外のニュースサイトからトピックを選び、端的な紹介と解説を添えた。大学卒業後に日本経済新聞を熟読することなどから本格的に経済を学び始めただけに、分かりづらい箇所は経験で知っていた。「例えば長期金利をあえて金利と省略する場合もあります」と敷居を低く設定。人気を集め、番組スポンサーがつき、収入を得られるようになった。独立を決意し、リスナーの編集者を通じて初の書籍も実現した。
経済キャスターとして、久米宏を理想に挙げる。「中学生の時『ニュースステーション』で久米さんの話がスッと入ってきたんですよね。僕も分かりやすく、しっかり伝わるキャスターになりたい。トピック選びも公正中立を意識して、リスナーの信頼を失わないように気をつけたいですね」と誓った。ブレークした経済キャスターの仕事との相乗効果で、ラジオDJとしても、輝きを増していくつもりだ。