気温40度以上の日を表す「酷暑日」や最低気温30度以上の夜を表す「超熱帯夜」といった暑さのインフレを感じる用語が発表された2022年。セミやカといった夏の風物詩と言えるような昆虫達も気温が35度を超えるとヘタって活動できなくなってしまうという。暑さが和らぎ過ごしやすい日も増えてきた今日この頃、人間以外にも胸を撫で下ろしている生き物がいるかもしれない。しかし、暑さをものともしない強靭な生き物達も存在する。暑さをはじめとする過酷な環境下でも生きられる生物は極限環境生物と呼ばれる。
今回は灼熱の中でも生き抜く意外な生き物3選を紹介したい。
・40度のサバンナを闊歩する哺乳類
暑さに強い哺乳類といって一番に思い浮かぶのは、砂漠の船とも呼ばれる、ラクダではないだろうか?しかし、ラクダ以外にも暑い環境に適応した哺乳類は多数存在している。その一つが長いツノを持つウシ科の動物、オリックスだ。オリックスの原産地であるアフリカやアラビアは、40度を超えることもある高温地域である。多くの哺乳類は脳が43度の高温にさらされると死に至るが、オリックスは、脳の温度を下げる特別な構造を持っているため、体温が45度に達しても生きることができる。
・熱水噴出孔に生息する貝
海水がマグマに熱せられて海底から勢いよく噴き出している穴を熱水噴出孔という。通常、水は100度で沸騰するが、深海では、水圧のため、100度を超えても沸騰せず、熱いもので400度にも達する熱水が噴き出している。とても生き物が生息できる場所に思えないが、熱水に含まれる硫黄や鉄を目当てに、細菌を筆頭にカニやエビ、貝など多様な生き物が集まっている。その中でも熱水噴出孔でしか見つかっていないスケーリーフットという貝がいる。このスケーリーフットは硫化鉄でできた鱗のような足を持ち、黒い殻も同じく硫化鉄でコーティングされている。過酷な環境で生きられる強さだけでなく、それすらも利用して生きるしたたかさに痺(しび)れる生き物だ。