七夕の意外な由来、実は「ほおずきの節句」だった 古来「望まない妊娠」を防ぐ薬

深月 ユリア 深月 ユリア
画像はイメージです(green_nishi/stock.adobe.com)
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 7月に入ると、最初の代表的な行事が「七夕」となる。全国各地で七夕祭りが開催され、学校や家庭などでは願い事を書いた短冊を笹の葉に飾り付けるなど、日本において国民的な年中行事、風習として定着している。だが、七夕には一般的に認識されているものとは異なる由来があるという。ジャーナリストの深月ユリア氏が専門家の話も聞きながら解説した。

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 七夕といえば現在では「織姫と彦星が年一回のデートするロマンチックな日」という印象が強いだろうか。しかし、元々の七夕の由来は、日本古来の年中行事である「棚機(たなばた)」と、中国から伝わった「乞巧奠(きこうでん)」にある。

 棚機(たなばた)は古代日本における禊(みそぎ)の行事(けがれを清める行事)だ。毎年稲の開花時期に合わせて、村の乙女が水辺の小屋にこもり、着物を織って棚に供え村人のけがれを清め、神様をお迎えする。乞巧奠は、機織りや裁縫の上達を祈願する中国の行事である。7月7日に庭先の祭壇に針や五色の糸を供え、織姫星に祈りを捧げるというもの。乞巧奠が奈良時代に日本に伝わり、棚機と融合し、七夕(しちせき)と呼ばれる宮中行事になり、室町時代に農村に伝わり、現在の「七夕の節句」の元になった。

 現在の日本には「五節句」(1月7日の人日、3月3日の上巳、5月5日の端午、7月7日の七夕、9月9日の重陽)があるが、それぞれの節句で季節の食べ物を祝い膳として食べる。そして、七夕の節句は「ほおずき(鬼灯)の節句」でもあり、 明治時代の前までは「 ほおずきの根 」を煎じて飲む風習があった。浅草寺をはじめ、各地で行われている「ほおずき市」も、その由来は「ほおずきの節句」にある。赤い七夕飾りの由来はほおずきの花ではないか、という説もある。「ほおずきの根」は漢方薬にも使われる。 ほおずきの地下茎 と根を天日干しにした生薬は酸漿根(さんしょうこん)といって、 解熱・咳止め・ 利尿作用などの効能がある。ただし、「妊婦さんは服用できない」という注意書きがある。

 旧暦の七夕の節句は、太陽暦では8月だが、この時期は稲の草取りを終え、水田の水を止めて休養をとり、秋の繁忙期に備える時期だ。実はこの時期に、「ほおずきの根」を飲むのは、秋の繁忙期に大事な労働力でもある嫁さんに田んぼで働いて欲しく、妊娠しても流産の危険性が高くなり、母子共に命の危険が及ぶためであった。つまり、「ほおずきの根」は望まない妊娠をしない為の避妊・堕胎薬として使われていて、 煎じて飲むという処方以外にも、煎じ汁で子宮口を洗浄するという方法もあった。

 七夕の節句は農耕文化において「勤労」「豊作」を願う節句だったのだ。七夕は農耕文化の祭りであり、おりひめ=織姫(養蚕の象徴)、ひこぼし=牽牛(農耕の象徴)にも農耕の象徴ではないか、と言われる。

 日本古来の食養学・本草学・薬食学・日本の伝統文化を研究し「武士の食卓」創始者でもある緋宮栞那(ひみや・かんな)氏に取材したところ、「ほおずきはとても苦いですよね。陰陽でいえば、『極陰』の食べ物で体を冷やしますから、妊婦さんは食べない方がいいですね。当時は極陰の苦いほおずきの実を食べて、妊娠しないように、流産をするようにしたのではないでしょうか。吉原や、廓(くるわ)などで、女郎たちの中でも、ほおずきによる避妊方法は流行していたようです。この季節、女郎屋の前では、ほおずきが育ててられていたのが、今は夏の風物詩になっています」という。

 ほおずきにはさまざまな花言葉がある。「自然美」「心の平安」という美しい花言葉もあるが、「裏切り・不貞・浮気」という花言葉もある。これは、浮気相手の子を妊娠した女性が、ひそかに堕胎するために「ほおずきの根」を使用したことに由来するという。

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