鼻の紋様で犬を特定し、迷子犬の発見者と飼い主をつなぐアプリ「Nose ID」を株式会社S’moreが開発し、試験運用が始まった。今月から動物愛護管理法の改正により犬猫への所有者情報入りマイクロチップの装着が販売業者などに義務化された中、迷子犬の発見者や愛犬家が手軽に助け合えるアプリにも注目が集まっている。
一匹ごとに異なる鼻の紋様「鼻紋」と愛犬や飼い主の情報を紐づけることで、迷い犬の発見者がスマートフォンのカメラで鼻紋を読み取り、登録済みの犬と照会できるサービス。登録済みの犬と合致した場合は、発見者と飼い主が個人情報を伏せたままアプリ上でメッセージをやりとりできる。
開発のきっかけは、代表取締役の韓慶燕さんが愛犬とはぐれてしまう恐怖を感じたことだった。自宅の火災報知器が作動しリードをつけないまま慌てて居室から避難した際、心臓に持病を持つ愛犬が行方不明になってしまえばその間は薬を与えられないと不安に思ったという。
発見者が犬の状態を確認できれば善意で病院へ連れて行ってくれるかもしれないと、「Nose ID」アプリには、犬の名前や生年月日だけでなく既往歴や常用薬、性格なども登録できるようにした。保健所等で読み取りを行うマイクロチップは公的な”最後の砦”であるのに対し、「Nose ID」は鼻紋で手軽に情報を把握し、一時保護中も愛犬家同士が「助け合い」できる仕組みになっている。
共同代表の澤嶋さつきさんは「全ての情報が鼻に集約されているイメージ」 と説明。今後は狂犬病のワクチン接種証明との連携や、ペットサロンや動物病院の「会員証」のような活用も視野に入れていると話した。
先月21日にテスト版のアプリをリリースし、これまでに約5000頭の鼻紋が登録された。AIによる鼻紋解析の精度をさらに上げるためには、より多くの鼻紋データが必要になる。まずは1万頭の登録を目指し、自治体や保護施設などと連携し地道に認知を広めている。
また、猫の鼻紋認証については、猫は鼻が小さく、しわの溝も浅いため技術的な難しさがあるという。澤嶋さんは、顔認証であれば可能性があるとし、「1~2年の間には開発したいと思っています。わんちゃんの方が回り出したら(落ち着いたら)やっていきたい」と話していた。