生き物を飼育するということは、既にその魅力に陥落しているか、またはその魅力に爪先を浸しながらその沼にどっぷり浸かってみたいと思っている状態であろう。嫌いな生き物を飼ってみようと思う人は恐らく少ないので、既にある程度好きであると考えられるが、実際に飼育してみて、さらにその好きという気持ちにもう一段階深い場所があったという嬉しい驚きを得ることがある。
私自身、様々な生き物を飼育してきたが、意外にハマった生き物ベスト3を紹介していこうと思う。
【3位・ゴキブリ】
ゴキブリに関しては、最初は好意というより好奇心で飼い始めた。凶暴性や猛毒、恐ろしい角や牙を持っているわけでもないのに、人々のヘイトを集める負の求心力では他の追随を許さない昆虫だ。私はそれほど強い印象をゴキブリに抱いたことがなかったので彼らの底知れなさに興味を持ち、ブリオッシュ、ブリトニー、ブリヂストンという名前のメス2匹、オス1匹の計3匹のマダガスカルオオゴキブリを飼い始めた。ところが、飼い始めたらこれが可愛い。よく見かけるチャバネゴキブリやクロゴキブリとは異なりゆっくりとした歩みが特徴的で、歩くごとに触覚をぴよぴよと上下させる姿の愛くるしさに心を射抜かれてしまった。そんなこんなで最大時には400匹を超えるゴキブリの大群と生活を共にしていた。
【2位・カブトエビ】
カブトエビを初めて飼ったのは小学生の頃だ。カブトエビはよく似たカブトガニと混同されることが多いが、カブトガニはクモに近い動物で、カブトエビはミジンコに近い動物だ。初夏の田んぼに姿を表すが、卵を孵化させるキットを飼って飼育する人が多いように思う。砂つぶのような卵を水に入れて数日待っていると、小さなカブトエビが水中を泳ぐのを観察できる。2,3ヶ月しか一緒にいられないが、うまいこと卵を残してくれれば来年の夏にまた彼らの子どもたちに出会うことができる。
小さくも壮大なフォルムといい、遥か昔から姿を変えずに生きてきた彼らの命のつながりを体感できることといい、机の上に掌サイズのロマンを飼っているような気持ちになれる。
【1位・ドブネズミ】
私の中では満場一致で1位はドブネズミだ。子猫と子犬の中間のような好奇心旺盛で懐っこい性格に加え、とても飼いやすく愛らしく、魅力に溢れた動物である。犬や猫を飼いたいけれど、十分なスペースがないという人に特におすすめしたい。同じ齧歯類の仲間でペット界のスターといえばハムスターだが、ハムスターは本来縄張り意識の強い自立心溢れる動物だ。しかし、ドブネズミは単独飼育がストレス負荷実験に用いられるほど寂しがり屋な動物である。飼い主と遊ぶことが大好きで、これだけ小さく飼いやすい動物はなかなかいない。(とはいえ、最大500gほど500mlペットボトルほどの大きさまで成長することもある。)