大谷だけじゃない!阪神にもいた伝説の二刀流選手「御園生崇男」に注目、ロイド眼鏡で投打走に活躍

北村 泰介 北村 泰介
阪神タイガースの投手兼打者として活躍した「元祖・二刀流」選手の御園生崇男さん
阪神タイガースの投手兼打者として活躍した「元祖・二刀流」選手の御園生崇男さん

 米大リーグは難航した労使交渉が妥結し、4月7日(日本時間8日)に開幕する。昨季は打者で46本塁打、100打点、投手として先発で9勝を挙げた二刀流の活躍でア・リーグMVPに輝いたエンゼルスの大谷翔平投手も本格始動した。昨年、野球の枠を超えた社会現象として取り上げられた「二刀流」だが、大谷ほどの実績ではないとはいえ、日本球界でも過去に存在したことをご存じだろうか。阪神タイガースの投手兼打者として活躍した御園生崇男(みそのお・たかお)にスポットを当てた。(※1940年まで阪神の球団名は「大阪」、文中選手敬称略)

 御園生に注目するのは、2005年からテーマを変えながら阪神カレンダーを非売品として自主製作している兵庫県芦屋市在住の鉄道設計技士・大森正樹さん。今年は「打順」に注目し、公式戦1万904試合を対象に各シーズンの打順が記されている。

 その中で、1938年(春季)の「スタメン最多パターン回数」の打順を見ると、「(1)松木(2)藤村(3)山口(4)景浦(5)伊賀上(6)藤井勇(7)御園生(8)田中(9)岡田」とある。29歳の若さで戦場に散った伝説の強打者で4番の景浦將、2番に座った初代ミスタータイガース・藤村富美男ら名選手に混じって、御園生は7番だった。大森さんは「大谷で二刀流が話題になりましたが、御園生の名を思い出す人は少ないのが残念です」という。

 大森さんは「1リーグ時代(1936〜49年)は、8番や7番で投手スタメンというのが多いです。ちなみに、タイガースでは戦後も投手を9番にしていないシーズンがあり、58、59年あたりも9番に山本哲や吉田義男が入ったケースが結構あります。御園生は投手ですが、野手としても多く出場しています。御園生の全出場試合数は831試合で、スタメンが459試合、そのうち投手のスタメンが196試合、野手のスタメンが263試合。途中出場が372試合です」と解説した。

 御園生は1916年(大正5年)、山口県防府市出身。関西大学を中退して36年に入団。右腕投手として、連覇した38年春季は前年からの連勝を「18」に伸ばし、2季連続で最高勝率のタイトルを獲得。37年秋季は11勝無敗の勝率10割で初優勝に貢献した。戦後の47年にプロ野球史上4人目の100勝を達成。14年間の通算成績は127勝70敗、防御率2・39。打者としては。通算506安打(うち5本塁打)、247打点。中でも、87盗塁(うち本盗6)という実績も目を引き、大谷同様、俊足と走塁の巧みさがうかがえる。野手としてのポジションは一塁手や外野手で、当時流行した「ロイド眼鏡」(米国の喜劇俳優ハロルド・ロイドに由来)がトレードマークだったという。

 引退前年の50年には背番号が「11」に。御園生は3代目で、関大の後輩である村山実が7代目となり、永久欠番になる。51年の引退後は阪神の一軍投手コーチ、2軍監督を務め、退団後は神戸市に本社のあるラジオ関西やデイリースポーツの解説者を務めた。同紙面を探すと、62年4月には春の選抜高校野球の展望記事にその名が見られた。プロだけでなく、アマ野球の論評もしていた。65年7月10日夜、肺結核のため尼崎市内の自宅で死去(同年7月12日付紙面の死亡記事より)。49歳だった。

 大森さんは「1967年生まれの私の世代は、プロ野球草創期の選手の現役時代は知らなくとも、OBとして存命し、監督やコーチ、解説者として活躍されているのを知っているので、親しみがある。御園生さんは65年に若くして亡くなっているので、他のOBよりも遠い存在のはずなのに、なぜか同じように親しみを感じる」と指摘する。

 では、御園生に関心を持った具体的な契機とは…。大森さんは「その理由ははっきりと思い出せます。1981年にタイガースに入団した中田良弘が85年にかけて18連勝したのですが、その時に連日、連勝記録保持者である御園生の名前が出ていました。偉大な記録を残した選手は、その記録が破られそうになると、過去から生き生きとよみがえってくるのです。御園生はそんな選手として記憶しています」と明かした。

 今後、日本球界でも新たな二刀流選手は出てくるだろうか。やはり、大谷が特別なのか。大森さんは「スーパースターは何十年に1人しか現れないのでしょうね。二刀流でなくてもよいからスーパースターはどこかにはいて欲しい。佐藤輝明は、そうなるような空気を感じるので、今年も目が離せません」とファンの思いを代弁した。25日のプロ野球開幕が近づいてきた。

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