市井(しせい)には専門家とは違った独自の視点で好きな対象にこだわる人がいる。兵庫県在住の会社員・大森正樹さんは阪神ファンで、2005年から毎年のテーマを変えたカレンダーを非売品として自主製作している。22年版の新作テーマは「打順」。球団創設の1936年から昨季まで、阪神の公式戦1万904試合を対象に各季の打順を複数の観点でまとめた。作者の思いを聞いた。(文中選手敬称略)
大森さんは1967年、東京生まれ。小学生の頃からの虎ファンで、大学を卒業した89年、就職を機に関西に移住。鉄道設計技士として勤務する傍ら、阪神の虎マークの年賀状や路線図アートなどを作成し、19年から20年には映画「男はつらいよ」シリーズの主人公・車寅次郎の顔をかたどった「寅さん路線図」が都内の京成電鉄「柴又駅」のホームに掲示されて話題になった。
阪神は全公式戦で9214通りの打順がある。1シーズンでは、最下位の00年が136試合で135通りあったが、優勝した85年は82通り(130試合)、03年は96通り(140試合)、05年は78通り(146試合)と抑えられた。打順が固定されると強い。今季はどうなるか。
大森さんは「無理して全員が1年固定しなくていいと思います。打順を固定せずに優勝も、大いに結構です。ロッテのバレンタイン監督は打順を固定せずに強いチームにしていました。打順が固定だと強い、そういうテーマをカレンダーで示しておきながら、すみません。都市伝説や通説というのは『ほんまに検証してアホちゃうか』というツッコミが大事であって、本当にムキになって証明するものではないと思っています」と回答した。
さらに、大森さんは「佐藤輝の2年目のジンクスを心配する人も多いかもしれませんが、彼は規格外の新人でしたから、1年目の後半に、既に2年目のジンクスを終えている…と、信じています」。キーマンに佐藤輝明を挙げた。大森さんは85年のリーグ優勝を大学1年時に神宮球場で目撃し、03年と05年は居住地と勤務地の間にある甲子園球場で歓喜の瞬間を見届けたが、寅年Vとなれば初体験となる。
「寅年は1938年(春季)と62年に優勝しているので期待したいです。世代交代がうまくいっていると思うので、チーム全体として上昇気流の中にあると思います。昨年前半は本当にいい状態がキープできていました。今年も、あの雰囲気を早く実現してできるだけ長く維持してほしいです。ケガや不調、コロナの影響もあるでしょうが、誰かがカバーすると思います。その時、一番状態のいい選手が必ず出てくる、そういう雰囲気が今の阪神にはあると思っています。シーズン通して同じメンバーというのは昨今の展開見ていると、無理なのかもしれません。3月スタートの選手と、7月スタートの選手と意図的に分けても良いかもしれないし、中継ぎも毎日ブルペンというのを改め、ローテーションで休むなども必要かもしれません」
また、寅年の阪神打順を別角度から見てみると…。
「寅年を2回続けてスタメンは、1人しかいませんね。38年と50年の藤村富美男です。12年現役続けるのも大変だし、スタメンを続けるのはもっと大変ということですね。あと、面白いのが、今年の矢野燿大監督は98年、10年監督の真弓明信は86年、98年と86年監督の吉田義男は62年、74年監督の金田正泰は50年、50年監督の松木謙治郎は38年に、それぞれスタメンで出ています。選手在籍のなかった藤本定義監督(62年)を除くと、寅年の監督は寅年にスタメンで出ていますね。とすると、10年のスタメンの誰かが、(次の寅年)2034年に監督をしているかも!鳥谷ですかね?」
10年の最多回数スタメンは、(1)マートン、(2)平野、(3)鳥谷、(4)新井、(5)ブラゼル、(6)金本、(7)城島、(8)俊介、(9)久保。寅年のスタメン選手が次回か次々回の寅年に監督をしているという「法則」に従えば、年齢的に10年時の選手が該当。34年、鳥谷敬は53歳となる。今季限りでの退任を表明した現時点の矢野監督と同年齢だ。ちなみに、大森さんの22年予想スタメンは(1)近本(2)中野(3)糸原(4)大山(5)マルテ(6)佐藤輝(7)ロハス(8)坂本(9)秋山。12年後の監督としてはまだ若いかもしれない。
最後に本音を一つ。「寅年で優勝してほしいですが、干支(えと)って、年末と正月しか話題にしないし、実際、2月から12月中旬まで、干支は忘れて意識してない国民がほとんどでは。優勝さえしてくれれば、なんでも良いです。干支は年賀状で使いますが、私の場合は毎年、寅年なので、リアルな干支、あんまり意識してないです」。筋金入りの阪神ファンは「毎年が寅年」なのだ。