ベストセラー「極道の妻たち(R)」(通称「極妻」)など数多くの著作を世に送り出した作家で僧侶の家田荘子が占い師になっていた。昨夏に「宿曜占星術アドバイザー」と「二十七宿鑑定士」の資格を取得したのだ。YouTubeやブログなどを積極的に更新している家田が、よろず~ニュースの取材に対し、その背景にある思い、近況や2022年に向けた新たな活動のビジョンを明かした。
「占い」には数多くの種類と資格がある。家田が取得したものは一般的にイメージされる手相見などではなく、生年月日で性格や相性などを占うのだという。
「『宿曜』とは27日ある月の満ちかけで、27種類あり、806年に遣唐使の弘法大師が持ち帰って1200年の歴史がある占いです。その人の本質や、その日の運勢、人間関係を占えます。人には表面的な性質や外見とは違った本質がある。その本質を占いによって見るわけです」
なぜ取得したのか。悩みを抱えて対面する相談者に対し、占いを絡めることで、より説得力を持たせられるからだという。苦しむ人たちのための「駆け込み寺」を作りたいという思いから、僧侶になって今年で15年。07年に高野山大学で伝法灌頂(でんぽうかんじょう)を受けて高野山真言宗僧侶となり、高野山の奥の院、または総本山金剛峯寺に不定期で駐在し、法話を行なう中、相談事は日常になっていた。その延長線上に「占い師」という選択肢が加わった。
「極妻」は日本経済がバブル期に入った1986年が初版で、90年代にかけて岩下志麻らが主演した映画のシリーズ化で大ヒット。91年には「私を抱いてそしてキスして~エイズ患者と過ごした一年の壮絶記録~」 で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞し、作家としての地位を確立した。現在まで数多くの作品を執筆しているが、僧侶と本質的な部分で通底する視点がある。ヤクザ(極道)、その妻、エイズ患者、性風俗業に従事する女性たち…。「光の当たらない人たち」の声を聞くということだ。
「幸福な人にはときめかないんです。私にはいじめられた経験があり、人が心の奥に閉じ込めたものを聞き出したくて取材をした。取材対象者の苦労話の中に自分と共通するものを見いだし、感情を分け合う。私は不器用なので何度もお会いしてお話を聞くのですが、表面では笑いながらも心に痛手を受けている人がいっぱいおられます」
コロナ禍では法話も取材も中断した状態にあるが、YouTube「家田荘子チャンネル」などで情報や近況を発信。ゲストとの対談では、和歌山・毒物カレー事件の林真須美死刑囚の長男とも会った。「私は林真須美さんともずっと交流があります。ご主人にもお会いし、息子さんとはその時に面識がありましたが、今回話を聞いて、本当に苦しんでおられることが伝わりました」。魂の叫びを聞く。家田は「今の世の中、つまずくと、テレビやネットで徹底的にたたかれる。かつては情けもあったのですが…。その人たちに、はい上がるチャンスを差し上げることが微力ながらできれば」と思いを語る。
昨年12月にはライフワークとする「四国八十八ヶ所霊場」巡りで高知県に行き、「吉原遊女供養」で都内の吉原神社を訪ねた。
「四国遍路は15年間、毎月欠かさずやっています。1年で1周1400キロ、日本列島を3周半しました。吉原遊女の供養も毎月行なっていて、私にとって『一生のお役目』です。1923年の関東大震災による大火で多くの遊女が亡くなられ、来年で100年です。YouTubeをご覧になった方が吉原にお参りしてくださり、こうしたネットの媒体が今まで注目されなかったことを発信していく手段になれば」
新年を迎えた。家田は「中止になっている法話や取材はコロナが落ち着いていけば再開し、じっくり対面でお話をしたい」と願う。占い師としての活動にも意欲的だ。
「あくまで『占い』ですから、依存しないで、自分で前途を切り開くため、前に出る小さな一歩になる力になれたら。あるいは首根っこを押さえて、ちょっと立ち止まって考えてもらうか。高野山大の大学院で学び、みなさんの相談を受け、背中を押す手段の一つとして法話や占いがあると思います」。そう語ると、家田は「占いは新人ですけど」と付け加えて笑った。