漫画創作を応援カフェ 自らもプロ目指す店長は客との交流で「刺激を受けています」

山本 鋼平 山本 鋼平

 大阪の南玄関口、天王寺駅から路面電車の阪堺電軌で2駅、昔ながらの住宅が並ぶ松虫駅前に小さなカフェがある。今年3月にオープンした「アトリエ&カフェGerbere (ガーベラ)」(大阪市阿倍野区)では漫画やイラストなどの作成、勉強や仕事に適したアトリエ、ワークスペースを備える。イラストや漫画家を描く人、学生や近所の一般客が集い、リーズナブルな価格で創作活動とお腹を支えている。店内で自身も漫画を描きながらプロを目指す店長の仲西美沙希さんに話を聞いた。

 イラスト教室、ギャラリーにも意欲

 仲西さんが店番中、近所の小学生の女の子が訪ねてきた。手にしていたのは女の子が描かれたイラスト。「絵を描くのが大好きな子で、教えてもらいたくて持ってきてくれたのが、すごくうれしかったですね」。もしここで漫画やイラストを教えることがあったら来てくれるかな、と伝えると、女の子から「ぜひ通いたい」とせがまれ、一層うれしい気持ちになった。イラストや漫画を描く者だけでなく、テスト勉強を行う学生、仕事でパソコン作業を行う者、さまざまな客が集う。「オープン当初はしんどかったけれど、だんだんお客さんが増えてきました」と手応えを口にした。

 幼い頃から絵を描くことが好きで、イラストやアニメを学べる高校を経て、漫画を学ぶ専門学校に進んだ。在学中に一度、漫画誌の賞に応募し、奨励賞を獲得した。昨年3月に卒業後はアルバイトをしながら創作活動に励むつもりだったが仕事が忙しく、創作から遠ざかった。「描かなきゃいけないのに」と焦りを募らせていた頃、母親がカフェをオープンさせる計画を立てていることを知り、一念発起。自身の希望を前面に押し出してギャラリーカフェを開いた。見つけた店舗は元天ぷら屋だったが改装し、母と2人で経営する。

 4人掛けテーブルが2台、2人掛け1台、1人掛け1台、カウンター4席の店内。コピック、トレース台や製本作業に必要な機器のレンタル、ワイファイやコンセントが設置されている。モーニングのトーストセットが420円、コーヒー400円、ピラフ550円などとリーズナブルで、同様の営業形態の店で見られる時間ごとの追加料金はない。学生時代、家では集中できず、ギャラリーカフェでは金額が高く、ファミレスでは周囲の視線が気になった経験から「安価で時間を気にせず作業してもらいたい」という思いを込めた。店舗2階はレンタルスペースで、学生のサークル活動やイベントに使用することが可能。来年にはカフェ内でギャラリーを開催することを目指している。

 ホール、キッチンに立ちながら自身も店で漫画を描く。当初は集中できなかったが「お客さんと漫画やイラストで交流することが増え、私も刺激を受けています」と前向きになった。学生時代は「完成させた作品の駄目なところが気になって、あまり人に見せなかった」というが、今秋にコミティアに初参加するなど積極的になった。「すごく楽しかったですし、これからも参加したい。まずは以前担当してもらった編集者さんと話し合って、そのまま放置していた作品を完成させて、また賞に応募したい。プロになりたいですね」と意気込んだ。

 好きな漫画家は「ジョジョの奇妙な冒険」で知られる荒木飛呂彦氏。負の感情を押し出した心理描写が得意で「漫画を読んだ友人から『心を病んでいるの?』と心配されます」と快活に笑った。店名は「希望」「常に前進」「辛抱強さ」の花言葉を持つガーベラ(Gerbera)から。あえてGerbereとつづりを1字変更したあたりに、仲西さんの個性が垣間見えるような気がした。

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