漫画作者・得能正太郎氏が吐露 連載8年半「NEW GAME!」時の流れが生む見方の”変化”

松田 和城 松田 和城

 「まんがタイムきららキャラット」(芳文社)の10月号で8年半にわたる連載が完結した「NEW GAME!」の単行本最終13巻が9月27日に発売された。作者の得能正太郎氏は、このほど、よろず~ニュースの取材に応じ、現在の心境を語った。

 

 「NEW GAME!」は、主人公・涼風青葉が高校卒業後に入社したゲーム制作会社での成長を描く物語だ。得能氏は「『学生時に分からなかったことが、社会人になって分かるようになりました』というような、作品の”見方が変わった”という声をよくいただきます」と明かした。連載開始時の中学生が、高校を卒業し社会人になる場合がある8年半という年月。読者の立場が変わることで、社会人の”楽しさ”や苦悩”といった、新たな気づきが作者の元に届いた。

 得能氏は約2年間ゲーム会社で働いていた経験を、作品に生かした。イラストレーターの夢を抱き、副業だったライトノベルイラストの仕事に専念するため、会社を辞めた。「今思うとよく辞めたなと思います」と苦笑いを浮かべた。

 漫画家への関心は低かったが、仕事を得るためにコミックマーケットで同人誌を販売していた際、出版社・ワニブックスの月刊雑誌「コミックガム」の編集長から声がかかった。「それまで漫画を描いたことがなかったんです。その機会をきっかけに描くようになってから、結果的にイラストの仕事より漫画の仕事が性に合っているなと思いました。イラストの仕事は、発注があって、他人のイメージを形にするものですけど、漫画は自分主体なので、好きなものを描けるという意味合いで面白かった」と転機になった。

 テレビアニメ化を果たし、2016年に第1期、2017年には第2期がTOKYO-MXなどで放送された。第2期放送から約1年後、「鬱(うつ)が治りました」というファンレターが印象に残っている。完結を記念した展覧会は、先月23日から都内の「“VR対応幻想美術館”MoFa」で開催中。会場内のボードにはファンからのメッセージが多く寄せられた。「仕事でつらいことがあった時、何度『NEW GAME!』に救われたか分かりません」「フランスからゲームプログラマーを目指して日本に来ました。Merci beaucoup(どうもありがとう)!!!」といった感謝の声に、得能氏は「仕事をしている方を尊重するような話を描いてきました」と満足げな表情を見せた。

 8年半変えなかったことがある。「その場の雰囲気だけで褒めてくれる方よりも、作品の内容をしっかり読んだ上で好きになってくれる方をターゲット層にするように考えていました。(人気を集めた)かわいい部分にばかり重点を置いていたら、もう少し短命で終わっていたのかもしれません」と分析した。

 涼風青葉の代名詞的なセリフ「今日も1日がんばるぞい!」は、作中1回しか発言されてない。「もしその場の雰囲気だけの方を選ぶのであれば、『がんばるぞい!』を連呼していれば良いのかもしれません。ただ、その代わり熱も冷めやすい。どういう読者が長く支持してくれるのかと考えた時に、真面目に作品作りに取り組むのが一番いいのではないかなと考えていました」と、自身の信念を語った。

 

 最終巻が発売された日に得能氏が感謝の気持ちを表明したツイートは、2万5000リツイート、7万6000もの「いいね」がつき、ねぎらいの声が多く寄せられた。「みんながあまりストレスを感じずに働けるような雰囲気の会社があればいいよね、ということが伝わり続ければうれしいなと思います」と今後も作品が息長く愛されることに期待を寄せた。

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