箸袋は紙だけじゃなかった 布製の箸袋による作品が57年の歴史で初展示 

山本 鋼平 山本 鋼平

 布製の箸袋があった。箸袋趣味の会・東日本支部は1日から、都営浅草線五反田駅の改札からA1・2出口に向かう地下通路の側壁掲示コーナーにて、作品展「コロナに負けず 人生をエンジョイ!第3弾」を開催している。飲食店や宿泊施設で入手した箸を収める紙袋を、おのおのが設定したテーマ別にまとめて趣を醸し出す。今回は長い歴史で初めて、布製の箸袋による作品が登場。東支部の副支部長を務める石州弘坊さんに、布製箸袋について聞いた。

 新型コロナ禍がやや落ち着き、今年5月の展示会より大幅に人出が増えた五反田駅。急ぎ足では気づかない通学者、通勤者の横で、活動の趣旨である「無価値と思われているものに価値を見いだす」を具現化した作品が並んでいる。高野山宿坊の箸袋(52所ある高野山の宿坊のうち30か所の箸袋を展示)、紅葉の時期にあわせ〝もみじ〟を描いたもの、たぬき三昧(狸の箸袋以外に狸をデザインしたマッチ、たばこラベルなど)、ウナギ一色のものなどに加えて、今回は1964年の会発足から初めて、布製の箸袋による作品が登場した。

 紙製にはない立体感、存在感。石州さんは「今回展示するものは中国、ベトナムに駐在中に入手したものですが、中国でも、布製を出しているお店は非常に少なかったです。お土産か趣味品として販売しているものもあるようで、中国人の知人にもらったこともあります。国内ではまだ入手したことはありません」と出所を語った。「紙に比べて少し厚いので温かみを感じます。一方、デザインは布柄のみで、布の色と織りの組み合わせなので派手さはないです。また、店名、住所などの記載は難しくなると思われ、店名を入れたものはごくわずかです」と、紙製とは異なる特色を説明した。

 さまざまな箸袋を集めてきた会員にとっても、布製の価値付け独特のようだ。「布製は蒐集しづらく、会員も持っている人は少ないので、コレクション対象としては希少ではありますが、位置づけは難しいですね」。一目置かれる存在ではないが、これは全ての箸袋に等しく価値を与える会の理念に沿ったものと言えそうだ。

 同会は実業家の尾上隆治氏(1914-2005年)による箸袋1万種蒐集を記念して、1964年8月4日(箸の日)に尾上氏が初代会長に就いて発足された。東京、名古屋、京都に支部を持ち、現在の会員は約100人。会報「箸袋趣味」は年複数回発行され、会則や会歌もあり組織化されている。各支部で年数回の例会を実施。持ち回りで年に一度、全国大会が開催されるが、コロナ禍のため20、21年と連続で中止になった。今回の展示会は今月28日まで。石州さんは「コロナ禍でもコレクションを継続し、ウィズコロナで人生を謳歌している一面を展示品でご紹介し、皆さんに元気になってもらいたいです」と呼び掛けた。

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