大手コンビニエンスストア「ローソン」は中国での店舗数が9月で4000店に到達したと発表した。1996年に中国初の日系コンビニとして上海市に進出し、苦戦を強いられた時期も経て2017年に1000店を超えた頃から店舗数増加に弾みがき、20年には中国事業の営業損益で黒字化を達成。25年に1万店を目指すという。同社出身の流通アナリスト・渡辺広明氏がよろず~ニュースの取材に対し、その背景や今後の展望を語った。
ローソンは9月10日、中国・遼寧省に新店を開き、現地店舗数が4000店に到達。日本の店でヒットした食品を紹介し、アニメグッズも展開。店舗は人気漫画「鬼滅の刃」のイラストで彩られたように、中国でも注目される日本カルチャーを押し出して、関心の拡大につなげている。日本全体の店舗数が頭打ちとなる中、中国市場の開拓が期待されている。
渡辺氏は大学卒業後、ローソンに入社。横浜地区の店舗で店長を務めた後、スーパーバイザーを経てバイヤーとなり、15年あまりの間に600種類以上、コンビニの商品開発を手掛けた。流通業界での出発点は同社にあった。
同氏は「96年の中国進出後も、98年までに導入されたLoppi(ロッピー、チケット販売や支払い代行などを行うマルチメディアステーション)、親会社がダイエー時代のビジネスコンテストで生まれ、01年から事業を始めたナチュラルローソンなど、流通王で創業者の中内功氏から脈々と受け継がれる、新しいことをやるカルチャーがあった」と背景を説明した。
さらに、渡辺氏は「中国では、おでんを持ち込んだ。おでんは串に刺すスタイルで、ひとつの食文化を作った。出店当時は今以上に中国の消費者の所得が低くて1店舗あたりの売り上げが少なく、収益モデルになっていなかったが、25年間くらい赤字で昨年やっと黒字になった。1000店になったのは17年頃、ここまで20年以上かかったが、地場小売業と契約を結ぶなどの施策が功を奏して、2000店から2、3年で一挙に店舗数を伸ばした」と経緯を振り返った。
一方で、渡辺氏は「黒字化したからといって、四半世紀の赤字だった部分を取り返せるかは懸念がある。中国の人口が20年には170万増にとどまり、人口減社会が目の前に迫っていて、一人っ子政策の影響で少子高齢化が加速している。仮に、GDPの伸びが鈍化し、また、米中関係のさらなる悪化でカントリーリスクが激化すれば、バラ色に転化するかどうかは予断を許さない」と指摘した。