平成ゴジラ、VSシリーズの生みの親である川北紘一特技監督には生前お世話になった。東宝撮影所内にあった川北ルームにお邪魔したのが最初で、その後は様々な場所でお会いする度に満面の笑みで話し掛けてくれた。NHKの番組で特撮ショートムービーを撮影していた時は、陣中見舞いにも来てくれて色んなアドバイスもしてくれた事もあったりして、色々とお世話になっていた。
2009年11月、嵯峨芸術大学の学園祭に川北監督と共に参加した事があった。学際のテーマが『カイジュウ』という事だったので、田口清隆特撮監督、UMA研究家の天野ミチヒロさん、造形師の寒河江弘さんなどが学際に参加。川北監督のトークショーもあり、ここで様々な話を聞く事が出来た。その中で印象的だった話が二つあった。一つは、街中でゴジラが何処を通って何を壊すかというロケハンをしていた時の話。
「スタッフ達と、あそこのビルを壊そう。あの辺も爆破しようって話していたら、後ろに警察が立っていたんだよ。テロリストと間違えられたんだよね」
あの頃はオウム事件もあったので、警察の警戒が厳重だったので、警察も物騒な話を聞いてテロリストだと思ったのだろう。まさかゴジラ映画の打ち合わせだと思わないしね。
もう一つの印象的な話は、僕が抱いていたゴジラに対する疑問に対する答えだった。僕の疑問はこうだ。
「ゴジラVSモスラで、ゴジラが1500度のマントルの中を移動しますが、ゴジラVSデストロイアでは1200度でゴジラがメルトダウンを起こすって言われてました。ちなみにゴジラの吐く放射能火炎は10万度とか50万度とかですが、これはどうなのでしょう?」
この時の川北監督の返しが最高だった。
「ちゃんと映画観たか?あの時、篠田三郎さんが言っただろ、奴は我々の常識を超えた生物だって」
川北監督はそういって笑った。これを聞いて、会場は大爆笑。この日、最高の笑いだった。
2014年12月5日、川北監督はご自身の誕生日に亡くなられた。生前、川北監督が出版された『特撮魂』の帯を頼まれた事があり、この時、帯用コメントをいくつか書いて提出したのだが、ダメ元で「川北監督は、テロリスト以上に観光地を派手に破壊しまくった男だ!」と書いたのも提出すると、監督がこれを偉く気に入ってくれて帯に採用された。このコメントはこの時のトークショーで聞いた話が元だ。どんな形であれ、偉大なる川北特技監督に関われた事が自分の宝である。