「サン宝石ィーーーーッ!!(中略)デココンテストで優勝したのは俺だーーーッ!!」。アクセサリー雑貨を販売するサン宝石が先月27日に経営状況悪化により民事再生法の適用を申請したことを受け、同社主催デコレーションコンテストへの応募作を振り返ったツイートが注目を集めた。受賞などの思い出を投稿したピヨノメさん(27)=ツイッター:@cray_G_lady=は現在、造形作家として活動中。サン宝石を愛用していた中学生時代から現在の創作活動について話を聞いた。
ピヨノメさんは「ピヨノメ造形舎」の屋号のもと、フェイクスイーツやアクセサリーの製作・販売を行っている。フェイクスイーツとは、本物そっくりに作られた”食べられないスイーツ”のことで、主に樹脂粘土を使用して製作される。くだものがたっぷりと盛られたタルトケーキやティラミス、シュークリームなどの作品を手がけてきた。
中学2年生から始めたフェイクスイーツ製作は、今年で14年目。ほとんどの技術は書籍から学んだという。サン宝石のコンテストに応募したのは、フェイクスイーツに出会ってから約1年後、中学3年生の夏だった。ショートケーキをモチーフに、ハート形の箱を樹脂粘土でデコレーションした作品で「大賞」に輝いた。
「最近もいくつか賞やコンペティションに応募しているんですけど、近年のものは賞をいただいても1番上じゃないことが多くて。なので、1番上の賞をいただいたという意味ではすごく記憶に残っている受賞体験でした」。当時は「月3000円のお小遣いで製作をやっていた」といい、飾り用のラインストーンなど、安くかわいいものが手に入るサン宝石は「めちゃくちゃ重宝した存在だった」と振り返った。
偏食家で子どもの頃から食べられないスイーツが多かったというピヨノメさん。作品は”食べたいもの”よりも「見てワクワクするもの」を題材に作るという。「真っ赤な木の実がいっぱい乗っているタルトとかは自分がそんなに食べられなくても、見るとテンションが上がるんですよね。真っ赤で華やかでツヤツヤキラキラしていて。おいしそうというよりも、見た時のテンションが上がった時の気持ちをエネルギーに作っています」。食事も忘れて作業に没頭することもあるといい「12~15時間(作業を)やってしまう日も珍しくない」と笑った。
作品で重視するポイントは「再現度」。「何かを見た時にどれだけ本物っぽい偽物を作れるかというところに焦点を当てているなと。本物にめちゃくちゃ近い偽物を見ると創作意欲が湧きますし、何を作る時でもこだわっているところですね」。現在はフェイクスイーツだけでなく、はちみつをモチーフにしたピアスなどのオリジナルアクセサリーも製作している。
美術系の大学を卒業後、就職先で「精神的にくらう体験」があり「引きこもりみたいな生活」をしていた時期もあったという。SNSで認知度が高まるにつれ、作品の売り上げが少しずつ伸びていったことを機に「会社員にも雇われデザイナーにもなれなかったんだったら、個人で作家活動を本気でやっていこう」と、造形作家としてのマネタイズに本格的に取り組み始めた。
ピヨノメさんは「好きなことでお金を稼げたら毎日遊んで暮らせるだろうなと思って始める方がいるんだったらやめてほしいと思ってしまう」と続けた。「楽ではない。努力は絶対に必要だし、間違えても誰も怒ってくれないって怖いことなんです。決して楽して稼いでるとは思っていないです」と、作家業の難しさを語っていた。