食べられる宝石「こうぶつヲカシ」育児中率8割で全国展開 シフトを組まない働き方

 宝石のような見た目の寒天菓子「こうぶつヲカシ」を製造・販売し、6月下旬にはレシピ本「きらきら鉱物菓子の作り方」(KADOKAWA)を発売したフードクリエーター集団「ハラペコラボ」(福岡県福岡市)は、35名の女性メンバーで運営されている。全スタッフのうち、約8割以上は育児中。同ラボ代表の野尻知美氏が、子育てと自己実現を両立する快適な職場作りを語った。

 代表作「こうぶつヲカシ」は、砂糖や寒天を合わせて作られる和菓子「琥珀(こはく)糖」を鉱物に見立てた商品。ダイヤモンドやエメラルド、水晶などを模した緻密なカッティングや鮮やかな色で人気を博し、全国での催事やオンラインショップで注文が殺到している。

 そんな大人気のハラペコラボでは、スタッフの出勤日時を指定するシフト制を取り入れていない。現在ラボで働くメンバーは35名の女性で、うち約8割に当たる30名は子育て中。メンバーは子どもの急な体調不良で仕事を休まなくてはならない時もある。「(休みの人がいても)なるべく人数を増やすことでみんなのリスクを減らせるし、自分も大変にならない」。通常の飲食店や企業よりも多い数のスタッフを雇い、各自が「できる範囲」で出勤する体制をとっている。

 野尻氏は「『絶対にシフトを組まないぞ』と掲げたことはないんです」と、あくまで自然に生まれた方法であると説明。「(子どもに)熱が出た時の気持ちとかも分かるし。休んでも休まっていないというのも知っているから『看病疲れお疲れ!』みたいな声の掛け方になるし。気まずくないですね」とメンバーの仲の良さを語った。

 「家族の幸せがあってこそ自分が幸せ」と考える野尻氏は、子育てとものづくりによる自己実現の両立を重視している。「作っているその子自身が生き生きとしていないと、いいものづくりはできないと思っているので。普通の会社の考え方だったら『お客さまファースト』が当然だと思うんですけど、私は『ラボメンバーファースト』。ちゃんと気持ちよく働けているのかということを日々大切にしています」と話す。

 「職場自体を見ると女性ばっかりなんですけど、裏方でめちゃくちゃサポートしてくれている」と、自身や従業員の家族の支えも欠かせないという。「楽しそうに仕事をしているからサポートしたくなるのかもしれないと思う。仕事が、稼ぐためのものを超えて喜びになっているのを見たら『自分が子どもを見ておけばその子は半日(仕事に)行ける』とか。子どもたちすら協力してくれますね」と、周囲の協力に感謝。「やっぱり子育ては大変だから、家庭にもサポートがあるし、職場に来ても気持ちよく働けたり休めたり、どこにいても快適な状態を作りたいと思っている」と続けた。

 ハラペコラボは「こうぶつヲカシ」以外にも、見た目の華やかなケータリングや弁当など、アートと食を結びつけたサービスを提供する。人気とともに事業規模が拡大し続けているが、野尻氏は「あまり実感がなくて。何も変わっていないですね」と自然体のまま。「いろいろな地域でこういった、シェアリングしたタイプの独創的な会社ができていったら楽しいなと。一つの例として、誰かの何かのきっかけになればいいなと思っています」と笑顔で語った。

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