「マルガイ」「マルヒ」「マルB」「ウカンムリ」いくつ分かる?警察隠語の世界を小川泰平氏解説

北村 泰介 北村 泰介
写真はイメージです(Caito stock.adobe.com.jpeg)
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 テレビ業界では7月期の新ドラマで刑事ドラマの多さが目立つ。テレビ朝日では、新作ドラマ5作中、「IP~サイバー捜査班」「緊急取調室(第4シリーズ)」「刑事7人(第7シリーズ)」と3本が刑事ドラマだ。刑事ドラマといえば、長い歴史の中で、「ホシ」「ヤマ」「ガサイレ」など警察隠語がお茶の間でもおなじみになった例がある一方で、あまり知られていない隠語も多数ある。その実例について、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏に聞いた。

 そもそも、警察の隠語はどのような必要から生まれたのかというと、警察無線を傍受されても、一般的に意味が通じないようにするためだという。そこから、警察官同士の絆を強める効果もあると考えられる。

 広く認知されているが、警察的には「現場」と書いて「げんじょう」と読む。一般用語では「げんば」と読まれるが、警察では捜査中の現場を「げんじょう」と呼び、これは刑事ドラマでもおなじみだ。

 逆に、ドラマでは聞き慣れない言葉もある。被害者のことを『ガイシャ』と呼ぶこともあるが、『マルガイ』ということもある。また、「マルヒ」は読みだけなら秘密を指す言葉だが、字が違う。小川氏は「マスコミの呼称は『容疑者』ですが、警察では『被疑者』です。『被(ヒ)』から『マルヒ』になります」と説明した。ということで、「〇(まる)」にちなんだ隠語をピックアップした。

 小川氏は「『マルサン』は参考人。『マルモク』は目撃者。『マルB』は暴力団となります」と解説。暴力団を指す場合の「マルボウ」という言葉は一般にも浸透しているので、暴力団の「B」となった。 あるいは「マルG」ともいう。同氏によると、警察には暴力団に関する「G資料」というものがあり、そこから由来していると指摘。Gは「極道」の略と考えられる。

 続いて、小川氏は漢字の偏(へん)にちなんだ警察隠語を紹介した。

 「『ゴンベン』は詐欺。『サンズイ』は汚職。『ニンベン』は偽造。『ウカンムリ』は窃盗。漢字の偏から由来しています。ただ、ウカンムリについてはエピソードがあります。林修先生のテレビ番組で、この隠語について私が解説した時、林先生は『ウカンムリ』が窃盗だとは分からず、出演者の中ではドラマ『相棒』で鑑識の米沢さんを演じている六角精児さんだけが正解だった。それで私が説明していると、林先生から『窃はアナカンムリです。ウカンムリではありません』と指摘された。国語の先生ですから、それが正しいのですが、警察では長くウカンムリと呼ばれてきたので、アナカンムリに変更されることはなく、今後もウカンムリだと思います」。そんなオチがあった。

 年間500杯以上のラーメンを食べる小川氏から着想を得たCS放送「映画・チャンネルNECO」オリジナルドラマ「ラーメン刑事」の第3話「虎ノ門・くろおび編」(初回放送・8月28日午後11時から)では、主演の津田寛治とゲスト出演の田中要次演じる刑事同士が警察隠語で会話するシーンがあるという。また、同氏は「小川泰平の事件考察室」という自身のYouTubeチャンネル(登録者数3万7000人)を持って配信しているが、過去に警察隠語の説明もしている。

 余談だが、記者はサツ回り時代、飲食店で現職の警察官と接すると、署員らは署長のことを「社長」と呼んでいた。「うちの社長が…」ならば、会話を店内の第三者に聞かれても、どこかの会社の話だと思われる。隠語というわけではないが、業界内の符牒(ふちょう)もまた記憶に残っている。

 この夏、さまざまな刑事ドラマでどのような実例が出てくるか。それをチェックする楽しみもある。

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