いま、ちょっとしたサウナブームなのだという。サウナ風呂の愛好家は「サウナー」と呼ばれ、マンガ、専門誌、テレビドラマの題材となるなど、その熱が広がっている。その一方、サウナは「刑事が情報提供者と会う場所」でもあるという話を聞いた。それは都市伝説ではなく、リアルな話。実際、現役時代に体験した元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏にエピソードを聞いた。
小川氏は当サイトの取材に対し、「サウナで情報提供者と会うかどうかは、人それぞれですが、私は利用していました」と振り返る。
「喫茶店で情報提供者、つまり警察隠語で言うところの『S (エス)』(※スパイの頭文字に由来)と話をしていると、誰かに見られたり、盗み聞きされたり、録音される可能性がある。それを危惧して、カラオケボックスに行くこともある。刑事かエスのどちらかが先に個室に入ってから電話で連絡して後から入る。それでも、カラオケボックスでは喫茶店の時と同様に、刑事が音声を録音していると思われて警戒されることもあるので、そんな時は『サウナで会おう』ということになります。お互いに裸ですから、録音機器などを隠し持つことはできないわけです」
サウナでの情報収集には苦労を伴うという。
「汗をだらだら流しながら話をするわけですが、裸で何も身に付けられないので、録音はもちろん、メモもできません。ですので、話を聞いている時は頭をフル回転して記憶し、一通り情報を聞いたら速攻でサウナを出てトイレに入ってメモをします。私はサウナ好きで当時は普段でも20分くらい入っていましたから耐えられましたが、サウナが苦手な人は大変だと思います」
記者は駆け出しのサツ回り時代、警察署の刑事部屋や夜回り(通称・夜討ち)先の刑事宅で情報収集した時のことを思い出した。相手の警戒心を解くため、雑談や世間話をしながら(野球の話だけして終わりなんてこともあったが…)、あらたまって取材の体(てい)を取らないため、目の前でメモはできない。部屋や家を辞した後、頭に入った断片的な情報がこぼれ落ちないうちに、トイレや車に駆け込んで一気にメモ書きしたものだ。その点において、サウナでの刑事エピソードは痛いほど伝わった。
最後に、小川氏は「エス」とのやりとりについて補足した。
「情報提供者への謝礼はポケットマネーで、私の現役当時は5000円くらいでした。車代にしてとか、メシでも食って…と。ただ、それが重なるとこちらの懐も大変になりますから、上司に相談して捜査費を増やしてもらうように頼みました。相手も、こちらに気を使ってくれる人もいて、『大変でしょうから、サウナじゃなくてもいいですよ』と言ってくる人もいたし、やはり内容によっては『いつものサウナで…』となることも。時間帯は、すいている平日の昼間ですね」
ラーメン通で知られる小川氏から着想を得た、津田寛治主演のCS放送「映画・チャンネルNECO」オリジナルドラマ「ラーメン刑事」の第4話「湯島・麺覇王編」(初回放送8月29日深夜0時から)でも、同氏の体験を元にしたサウナの話が紹介されるという。本寸法のサウナドラマとは別の切り口での展開に注目している。