東京五輪、間の悪すぎる組織委広告「感動をお持ち帰りいただきます」 無観客会場チケット当選者が憤り

山本 鋼平 山本 鋼平

 東京五輪の無観客会場チケットホルダーが11日、当サイトの取材に応じ、やるせない胸中を語った。複数枚が当選していたというこの人物は、都内在住の40代男性会社員。不意に飛び込んできた広告に、いら立ちが募ったという。

 8日に首都圏会場の無観客が決定。9日に北海道、10日に福島も無観客が決まり、総チケットの97%が払い戻しとなる事態になった。昨春以降、社会は新型コロナの捉え方、政治への向き合い方、命と経済と社会活動への考え方、ワクチンに対する信頼など、さまざまな方面で分断とストレスを生んでいる。東京五輪は疫病神のごとく扱われる存在になってしまった感がある。

 取材に応じた会社員は前述のテーマに声を挙げるつもりはないという。ただシンプルに「馬鹿にしてるのか、と腹が立ちました」と憤る事象が起こった。スマホをのぞいたところ、以下のような東京五輪組織委員会の広告が掲出されていたのだ。

 「入場は手荷物少なくストレスフリー。大きな感動をお持ち帰りいただきますので、手荷物は最小限でお願いいたします」

 会場への持ち込み禁止物品を案内する内容だった。クリックすると詳細な説明を行う動画に導入される。「きっと前から予定されていたもので、組織委員会は混乱しすぎて、チェックする時間もなかったのでしょう。それにしても間の悪い内容だと思います」。憤りはすぐに諦観に変わった。

 チケットの当選案内はしっかりと変わっていた。種目の下に【無観客】と記入され、赤地に白字で「入場不可」の注意書きが加わった。ステータスは「有効(利用可)」のまま。15枚当選したというが「ただただむなしい」とつぶやいた。

 五輪開幕後はどのように向き合うのか。「なんだかんだと中継は見てしまうと思います。ただ、これまでのように価値観を押しつける中継は勘弁してほしいですね。感動とか勇気とか…。選手団の壮行会で〝気持ちはノーディスタンス〟と連呼されていたので、ああ、今回は絆とか団結とか心は一つ、みたいな感じになるのかな、と嫌な予感はあります。選手には頑張ってほしいですが、競技後はこれまで以上にリポーターに感謝と恩返しのことばかり質問されるのかと思うと、少し気の毒な気もします」と話した。

 東京五輪は7月23日に開幕する。

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