「粗忽長屋」が「インスマス長屋」に!? TRPG落語の三遊亭楽天さんに聞くTRPGの魅力

あんどう美紗子 あんどう美紗子

VRやオンラインなどハイテクなコンピューターゲームが続々と発売される昨今だが、その反動なのか仲間とテーブルを囲んで会話を楽しみながらプレイするアナログゲーム・テーブルトークロールプレイングゲーム(以下、TRPG)が見直されつつあるようだ。

今や全盛の『ドラゴンクエスト』『ファイナルファンタジー』などのロールプレイングゲーム(以下、RPG)も、元はと言えばこのTRPGから派生したもの。TRPGは会話によって進行するのが特徴で、ゲームマスターと呼ばれる進行役がプレイヤーに状況を伝え、プレイヤーは受け持つキャラクターに合った行動を宣言し、その行動の正否判定をしながら進めていく。

共に遊ぶ仲間と紡ぎ出す一期一会の物語を味わえる…これこそがTRPGの醍醐味である。

そんなTRPGの魅力を多くの方に伝えようと、古典落語を元にTRPGでお馴染みのクトゥルフ神話を題材とした改作落語『TRPG落語』を演じるのは落語家の三遊亭楽天さん(@3utRakuten)。『インスマス長屋(粗忽長屋)』『インタラクティブ死神(死神)』『ドラゴンほめ(牛ほめ)』など、斬新な演題が並ぶが、TRPGも落語も言葉だけで様々な物事を表現するため、親和性が高いという。

楽天さんにお話を聞いてみた。

筆者:楽天さんはブログやYouTubeチャンネルで様々なゲームについて解説されている中でも、TRPGを特に好まれているとのことですが、TRPGの魅力についてお聞かせいただけますか?

楽天:私はファンタジーものが特に大好きなのですが、プレイヤーとしては大好きなファンタジー世界の住人として冒険が出来る事、ゲームマスターとしては自分の用意したシナリオでプレイヤーを楽しませる事が出来るところにそれぞれ魅力を感じております。

会話によって進行するので、想像力の許す限り様々な事が試せる事も魅力の一つだと思います。

筆者:好きな世界観で自分自身が自由に冒険できるなんて、最高にワクワクしますね。進行役としてシナリオを考えるのも楽しそうです。

そんなTRPGを題材に古典落語を改作するというアイデアがとても斬新だと思うのですが、TRPG落語をお作りになったきっかけをお聞かせいただけますか?

楽天:「落語もアナログゲームも人が集まらないと成り立たない、逆に言えば落語会に来てくださったお客様と一緒にアナログゲームが遊べるのでは?」と考え、『らくゲー』という落語を聴いて戴いた後にお客様方と一緒にゲームを遊ぶ落語会を開催しました。

そのチラシをゲームショップさんに置いて戴いていたら、元アークライトの社員さんの松尾さんという方が、『りゅうたま』というTRPGの作者でもあり、当時TRPGカフェ Daydream店長をされていた岡田篤宏さん(現在はTRPGカフェ モノドラコ店長)という方に「こんなイベントがあるようですよ」と話して下さった様なんです。後日、岡田さんから「TRPGを題材とした落語をやってみませんか?」とご提案戴き、それがTRPG落語を作るきっかけになりました。

TRPG落語の中には『らくゲー』で既に原型が出来ていたもの、落語家になる前に友人たちとの冗談の中から生まれたものなどもありますが、岡田さんからのご提案が無ければ間違いなく、私の脳内で埋もれていた事でしょう。

筆者:お客さんとのご縁を大切にする楽天さんだからこそ、TRPG落語を作ることが出来たのだと思います。

TRPG落語を作るにあたって、ご苦労なさったことや見所についてお聞かせいただけますか?

楽天:TRPG落語は、ほとんどの根多(ねた)が「改作」という形を取っていて元になる古典落語があるのですが、「どの落語がTRPGのどのシチュエーションに近いか?」などを考えて拵えています。その共通点を見つけるのが苦労でもあり、楽しんで戴きたいポイントでもあります。TRPG落語で初めて落語に触れた方には、是非、元ネタの古典落語にも興味を持って戴けたら幸いです。

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三遊亭楽天さん関連情報

普段は古典落語を中心に活動。ゲーム系イベントなどでのTRPG落語口演も積極的に展開している。グループSNE『GMウォーロック』誌にて『三遊亭楽天のTRPG四方山噺』を連載中。

【オフィスのりてん】https://www.noriten.com/

オリジナルの6面体ダイスやダイスポーチといったTRPGグッズ、『クトゥルフ落語 インスマス長屋』のCDの販売中。

【三遊亭楽天Official Web Site】https://www.3utrakuten.com/

【ブログ】http://3ut-rakuten.blog.jp/

【Twitterアカウント】(https://twitter.com/3utRakuten

【YouTubeチャンネル】https://www.youtube.com/channel/UC_wOe4lzUF1SII8kj24kFYg

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 「TRPG落語は私個人の力では成し得ない、不思議なご縁をTRPGユーザーの方々から戴いて成り立っております。芸は身を助くならぬゲームは身を助くだとつくづく感じており、この場をお借りして感謝申し上げます」と楽天さん。

TRPGは仲間と共に唯一無二の物語を冒険するワクワクと、プログラムされたゲームでは味わうことのできない魅力に溢れている。それはお客さんとのご縁を大切にする落語の美学と、楽天さんの信念そのものだった。

楽天さんはYouTubeでTRPGのはじめ方解説や、様々なゲームや趣味について語られているのでぜひチェックしていただきたい。そしてTRPG落語にもご興味を持った方はゲームを愛する仲間と共に、ぜひ楽天さんの寄席に足を運んでもらえればと思う。

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