akiya_b

迷惑メールにあった契約更新案内、気づかず締め切り超過!「見てません」は通用する?【弁護士が解説】

夢書房 夢書房

動画配信や音楽配信などのサブスクリプションサービス(以下、サブスク)は、私たちの生活に深く浸透している。一度契約すれば、豊富なコンテンツを好きなだけ楽しめる手軽さが魅力である一方、思わぬ落とし穴が潜んでいる点を忘れてはならない。それは多くのサブスクで、契約の自動更新が採用されており、利用者から契約解除を申しでないと会費が引き落とされてしまう点だ。

なかには更新前の確認メールが迷惑メールフォルダに入っており、知らないうちに会費が引き落とされてしまったという人もいるだろう。重要な通知が迷惑メールに振り分けられてしまい、意図しない契約更新や料金請求につながってしまうトラブルは、サブスクに限った話ではない。

このような場合、その責任は一体誰にあるのだろうか。通知に気づけなかった受信者か、それとも迷惑メールとして処理される可能性を考慮しなかった送信者か。まこと法律事務所の北村真一さんに話を聞いた。

ーメールは、どの時点で「相手に到達した」と見なされるのですか

電子メールによる通知が法的に「到達した」と見なされるのは、相手方のメールサーバーに記録され、受信者がいつでも内容を読み取れる状態になった時点です。これは「到達主義」と呼ばれ、電子消費者契約法などで定められています。

重要なのは、受信者がメールを実際に開封したかどうかは問われないという点です。メールサーバーに記録された段階で、法的には「到達した」ことになるのです。

ー迷惑メールフォルダに入ってしまった場合も「到達した」ことになるのですか

その通りです。現在の法解釈では、迷惑メールフォルダに入ってしまった場合でも、受信者のメールサーバー内のメールボックスに記録されている以上、「到達した」と見なされるのが一般的です。

迷惑メールフィルタは受信者側の設定や利用しているメールサービスの仕様によるものであり、送信者側がコントロールできる範囲を超えるため、迷惑メールフォルダへの振り分けをもって「未到達」と主張するのは難しいのが現状です。

ー迷惑メールが原因で自動更新されてしまった場合、契約の無効や返金を主張することは可能ですか

残念ながら、迷惑メールに入っていたという理由だけで契約の無効や返金を主張するのは、困難と言わざるを得ません。法的にはメールがサーバーに届けば「到達」と見なされるため、事業者側は通知義務を果たしたと主張できます。自動更新条項自体は、契約書に明記されていれば有効とされるのが一般的です。ただし、例外的なケースも考えられます。

ー「受信側の過失」「送信側の配慮不足」が問われるケースはどのような場合ですか

「受信側の過失」と見なされやすいのは、利用規約などで「メールでの通知に同意」しており、かつ迷惑メール設定の確認を怠っていたような場合です。日頃から迷惑メールフォルダを定期的に確認するなどの注意義務があったと判断される可能性があります。

一方で、「送信側の配慮不足」が問われる可能性としては、更新通知メールが、広告メールと見分けがつかず、消費者が誤認するような表示をしていた場合が該当します。

また、高額な契約の更新など、消費者にとって重要な影響を及ぼす通知をメールのみで行うことの是非が問われる可能性があります。サイトへのログイン時やアプリ起動時にポップアップで通知するなど、複数の手段で通知する配慮が求められるケースも考えられるでしょう。

最終的には個別の事案ごとの判断となりますが、送信者側が消費者保護の観点から、より確実に通知が届くような工夫を凝らすことが望ましいと考えます。

●北村真一(きたむら・しんいち)弁護士 

大阪府茨木市出身の人気ゆるふわ弁護士。「きたべん」の愛称で親しまれており、恋愛問題からM&Aまで幅広く相談対応が可能。

よろず〜の求人情報

求人情報一覧へ

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース