奈良県立奈良南高校(奈良県大淀町・吉野町)が、2026年度より宮大工を育成する「伝統建築科」を新設する。
学校の魅力向上のため次年度入学生より学科の再編と新学科の設立を行い、これまであった「建築探究科」「森林・土木探究科」の内容をさらに特化した「伝統建築科」を新設。県内には歴史的文化財など多くの寺社があり、修理・保存・建設等に関わる機関・企業が存在する。また吉野地域は古くから吉野スギ・ヒノキなど高級国産材に関わる地場産業も盛んなため、教育的な学習環境に恵まれているのだ。設立の理由など、副校長の喜多教人さんに話を聞いた。
―――宮大工育成の重要性と、現在の問題点とは。
喜多:関連企業の方々などに聞くと、弟子入りを希望する若者もいるが減少傾向にあり、住み込みや長時間の仕事等の働き方が合わず途中で辞める者も多いそうです。徒弟制度という方法も見直しが必要との話も聞きました。職人の世界は「考えるより手を動かせ」という世界でしたが、これからは雇われる大工で終わらずに、独立を目指し基本的な技術とともに、自分で技術を高めるために研究しようとする姿勢や幅広い知識も必要になるのではないかと考えています。
――宮大工は大工の中でも高度な技術が必要だと思いますが、どう技術修得を目指しますか?
喜多:3年間のうち半数以上の授業を専門的な学びにあてる予定です。1学年で建築大工技能士3級レベルの技術を身に付け、2学年からより高度な技術を身に付けることを目指します。実習だけでなく文化財修理の現場見学や体験、インターンシップ等の時間も充実させ、高校での学びと将来像を結びつけながら、主体的に学ぶ姿勢を養えればと思います。
県文化財課文化財保存事務所や県内の寺社建築・修繕等を行っている企業に協力いただき、宮大工から直接指導を受ける機会も多く設けたいと考えています。
――卒業後の進路について
喜多:関連企業への就職が中心になると考えています。また大学などへの進学も応援し、教員や公務員、建築士として活躍する可能性も広げたいです。身に付けた宮大工の知識、技術を生かして、寺社建築、修繕の他、木造建築、古民家再生等、全国で活躍する人材になってもらいたいです。
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SNSなどでは「奈良で学べるのは大きい」「日本の文化、伝統を引き継げる人材が必要」「日本の気候や材料に合った技術を学ぶことが大事」などの反響が集まった。生徒募集は全国からも受け付けるとのこと。万博で建築に興味を持った学生も多いのでは。文化継承のため、活躍する人材が輩出されるのを期待したい。