電車の窓から気になった大阪・十三「柿しぶ」の看板 正体は江戸時代・元禄年間から受け継ぐ〝渋い〟専門店

中江 寿 中江 寿

 阪急京都線を利用した人なら、車窓から目にしたことはあるだろう。大阪・十三駅近くにある「柿しぶ」の看板。記者もよく乗っており、「しぶ柿ではない、いったい何?」と以前から気になっていたので調べたところ、「柿渋」を専門に扱っている株式会社・大阪西川の工場だと分かった。

 「柿渋」とは、夏の時期に収穫した青い渋柿の実を砕いて圧搾し、自然発酵・熟成させた液。抗菌・抗ウイルス作用があり、飲料や石けん、染料、日本酒を造る工程などに使用されている。傷薬や毒消しの薬として、他にも耐久性を高めるために桶や天井板、和傘、うちわなどの和紙に塗装など、戦前は需要が多かった。だが、戦後の医療や科学技術の進歩により需要は減少。現在、専門店は京都に4店舗、大阪ではここだけとなった。

 さっそく、工場近くのショップへうかがった。十三駅東口から徒歩5分の場所で、「柿しぶ」の看板を掲げて、柿渋を使ったさまざまな商品を販売している。京都、岐阜の農家に渋柿の収穫、原液の製造、熟成を委託。工場に運ばれた原液はさらに熟成され、鰻のタレのように継ぎ足しをしながら、高品質を保っている。

 同社の歴史は古い。江戸時代の第5代将軍・徳川綱吉が治めていた元禄年間(1688~1704年)に京都・伏見で創業。約100年前に本家から独立した先々代が大阪・十三に進出。現在の3代目・西川道雄社長(70)は「十三は交通の要所で、しじみ漁が盛んで、灘の酒蔵も近くにありました。魚の網や木の道具、酒の桶、酒袋などをコーティングするのに、使われていたようです」と話した。

 原液は食物繊維、ミネラル、ビタミンなどの多くの栄養素が含まれ、ポリフェノールは赤ワインや緑茶の約10倍。健康補助食品として親しまれてきた。実際に飲んでみると、ぎんなんのようなニオイと口の中に〝渋さ〟が広がる。慣れない人は、薄めて飲むのがオススメだ。飲みやすいようにカプセルも販売。ほかにも柿渋で染めたカバンや財布なども置かれている。

 「柿しぶ」の看板を目に人が「どういうお店ですか?」と訪ねてくることもあるという。「すごく宣伝になっていますね」と西川社長。実際に足を運んで、古くから日本人の生活を支えてきた「柿渋」に触れてみるのもいいのでは。

 営業日は平日と土曜日の10時から18時(年末年始・お盆を除く)。詳しくは大阪西川のホームページで。

よろず〜の求人情報

求人情報一覧へ

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース