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「ただの古い壺だと…」祖父からもらった骨董品が数年後に高額だったと判明!贈与税の対象になるの?【税理士が解説】

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ある男性が実家に帰省した際、祖父から「昔から床の間に飾ってある壺だが、もうお前にやるよ」と言われ、埃をかぶった古い壺を譲り受けた。特に価値があるものとは思わず、自宅のインテリアとして飾っていた。

その数年後、祖父が亡くなり相続税の調査が入った際、税務署から「数年前に贈与された壺について価値を証明するものはありますか?」と指摘を受ける。慌てて鑑定してもらったところ、その壺が実は有名な作家の作品で数百万円の価値があることが判明する。

男性は「ただの古い壺だと思っていたのに…」「贈与税なんて払えるわけがない…」と顔面蒼白になってしまった。このように価値が分からない骨董品などを譲り受けた場合、贈与税はどのように扱われるのであろうか。正木税理士事務所の正木由紀さんに話を聞いた。

ー贈与税の対象となる「価値」は、どのように判断されるのですか

贈与税を計算する上での財産の価値は、贈与時点の「時価」、つまり客観的な市場価値で評価されるのが原則です。ただし、骨董品や美術品のように、一点一点価値が異なるものの評価は簡単ではありません。

このような財産の評価方法には、主に「売買実例価格」と「精通者意見価格」の二つが存在します。「売買実例価格」とは、その名の通り、実際に市場で売買されている価格を参考にする方法です。一方、「精通者意見価格」は、鑑定士や古美術商といった専門家による鑑定評価額です。

このケースのように、作者不明の古い壺などは、専門家の鑑定によってはじめてその価値が明らかになる場合が多いです。

ー贈与された時点で価値を知らなかった場合でも、納税の義務は生じますか

贈与税の納税義務は、財産を受け取ったという事実に基づいて発生するため、受け取った側がその財産の正確な価値を認識していたかどうかは問われません。「価値があるものとは知らなかった」という主張は、残念ながら税務署には通用しないので、贈与として指摘され、評価額によっては贈与税が課せられます。

ー贈与税の申告・納税はいつまでにおこなう必要がありましたか

贈与税の申告と納税は、財産を受け取った年の翌年2月1日から3月15日の間に行わなければなりません。この期限を過ぎると、本来納めるべき税額に加えて、「無申告加算税」や「延滞税」といった追徴課税がペナルティとして課せられる場合があります。

この男性のように、数年後に税務署からの指摘で初めて贈与の事実と価値に気づいた場合、本来の申告期限を大幅に超過しているため、これらのペナルティは免れないでしょう。

ー価値の分かりにくい骨董品などを譲り受ける際に注意すべき点はありますか

第一に、安易に受け取らないことです。特に、骨董品や美術品、あるいは古い宝飾品などを譲り受ける際には、まずその客観的な価値を把握しなければなりません。信頼できる鑑定士や専門業者に鑑定を依頼し、評価額を証明する書類を入手しておくべきです。

その上で、贈与を受けるのであれば、誰がいつ、何を贈与したのかを明確にするために「贈与契約書」を作成しておくことが望ましいでしょう。

鑑定の結果、もし高額な価値があることが判明したのであれば、基礎控除の範囲内で分割して贈与を受ける、あるいは適正な時価で買い取る(売買契約を結ぶ)といった対策も考えられます。

後々、思わぬトラブルに発展させないためにも、「価値が分からないもの」を譲り受ける際は、まず専門家に相談するという意識を持つようにしましょう。

◆正木由紀(まさき・ゆき)/税理士 10年以上の税理士事務所勤務を経て令和5年1月に独立。これまで数多くの法人・個人の税務を担当。現在は、社労士や司法書士ともチームを組み、「クライアントの生活をより充実したものに」をモットーに活動している。私生活では2児の母として子育てに奮闘中。

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