中学受験において、算数はもっとも得意不得意の差が出やすい科目といわれている。筆者の家では、長男(現在高校1年生)と次男(現在小学5年生)、そして夫の3人がそろって算数好きだ。根っからの文系で、理数系に苦手意識が強い筆者にとって、彼らとの暮らしは発見の連続である。
たとえば新聞や電車の広告、テレビのクイズ番組など、どこかで数や形を扱った考える系の問題を目にすると、彼らはすぐさま反応する。「あ、これ解いてみよう」と思うより前に、すでに頭の中では勝手に考え始めているようだ。その集中のスイッチの入り方は、そばで見ていて興味深い。
問題に出会うとすぐに解きたがるだけでなく、答えを先に見ることを極端に嫌う。自力で解ききることに強いこだわりがあり、筆者が「答え見る?」と言おうものなら、「待って!まだ自分で考えたい」と全力で拒否する。
家の中では、算数に関する情報が自然と集まり共有されていく。YouTubeで算数系のチャンネルを発見すると、3人でワイワイ楽しみながら視聴している。長男や次男が問題を解いて苦戦していると、「どれどれ?」と残りの二人が集まってくる。あーだこーだと解き方を話しているうちに、自然とちょっとした算数タイムが始まっている。
日々の生活でも、算数男子がいると便利な場面が多い。たとえば、料理中に「185グラムの2.5倍って何グラム?」といった質問を投げかけると、誰かが即座に答えてくれる。こちらとしては、電卓を出すまでもなく計算が済み助かっている。
そんな3人は今、テトリスに夢中になっている。瞬時に図形を把握し、最適な位置に落とすこのゲームに惹かれるのは、空間認識力やパズル的な思考力が関係しているのかもしれない。毎日対戦するのが恒例になっており、ゲームを通じての真剣勝負を楽しんでいる。
ただし、算数男子との暮らしは楽なことばかりではない。寝る時間になっても「もうちょっと」「なんか分かりそう」と言って、なかなか手を止めようとせず、いつまでも問題に向き合っていることがある。答えが出ないままでは気持ちが悪いらしく、解けるまで布団に入ろうとしない。どうしても解けない問題にぶつかって、悔し涙を流すことも少なくない。
それでも、こうした算数との向き合い方を日常の中で自然に実践している姿を見ると、「算数が得意」というのはただ点数が取れるというだけではなく、考えることそのものを楽しめる力なのだと感じる。一家に一人いると、思いのほか役立つし、そばで見ていて飽きない。それが筆者の実感だ。
<プロフィール>
野田 茜
2男1女のママライター。2022年、高1長男が完全塾なしで中学受験をし、偏差値(四谷大塚)60半ばの中高一貫校へ進学。現在、小5次男が通信教材を利用し自宅学習で中学受験に挑戦中。自身は中学受験未経験で大学まで公立育ち。中学受験の問題の難易度にまったく歯が立たず、逆に子供に教えられる。「ママ、教えてあげよっか?分かる?」と次男に心配される日々。